【A3!】向日葵は君に似合わない (ページ9)

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5.いざ寮へページ9

手元にある付箋とメモ書きだらけの台本を見て立ち尽くす。しばらく公演はないって言ってたから急いで返さなくてもいいとは思うけど、

＿｢ほんとに劇団に入れて良かった…！｣

幸せそうに見つめていたこの無口なボロボロの本を、彼の元に早く返さなければと直感的にそう感じた。

君も私より咲也に大切にされたいよね

確か、咲也が住んでいる寮はこの前観に行った劇団の近くだったはずだ。そもそも家からも遠くないし、まだ外も少し明るい。今のうちに届けに行ってあげよう

と、意気揚々そう考えたのはいいものの、いざ寮と思わしき場所に着くと思ったより広くて、入口の前で立ちすくんでしまった。
どうしようこのままじゃ怪しい人になってしまう

咲也に連絡してここまで取りに来てもらったらいいということに気づき、咲也が出てくるまで待つ。
少し待つと彼は慌てた様子で飛び出してきた

「っごめんAちゃん、わざわざこんなとこまで！｣

『ううん気にしないで、じゃまたね』

「あれ咲也くん知り合い？」

無事台本が咲也の手に渡ったことを確認して、その場を去ろうとすると、知らない女の人に声をかけられた。

「あ、監督さん！」

『監督？』

彼に言われて数秒考えて気づいた。なるほどこの人が咲也が言っていた、ボロボロの劇団を何とか保って住まわせてくれた恩人、か。いつも咲也がお世話になってます。