【A3!】向日葵は君に似合わない (ページ7)

今日:15 hit、昨日:19 hit、合計:12,088 hit

4.従兄弟ページ7

『ただいま。』

もうそろそろ扇風機が必需品になるかな、なんて考えながらまだジメジメしたような暑さの中家に帰ると靴が1足多かった。どうやらお客さんが来ているらしい

「あ、Aちゃんお帰り！」

『あれ、咲也？』

まるで同居してるかのように平然と玄関へ駆け付けて来たのは従兄弟の咲也だった。
花が咲いたような眩しい笑顔で私の名前を呼び、しっぽが揺れているみたいで犬と見間違えてしまいそうだ。
おかしいな、咲也の方が年上なのに。

「久しぶりに時間が出来たからAに会いに来たんだって｣

『そっか、咲也最近劇団で忙しかったもんね』

リビングから顔を出したお母さんに｢ただいま｣ともう一度言って、話に耳を傾ける。

「あの、その事なんだけど、Aちゃんどうだった…？｣

『すっごく良かったよ』

「ほんと！？｣

穏やかで優しくて、欲なんてなさそうな咲也が、まさか本気で演劇をしたいと思ってたなんて知らなかった。
確かに昔から演劇をよく見ていた時もあったけど、彼は大人しいタイプだったから表に出るなんて考えていなさそうだったし。

だから彼から｢劇団に入って演劇をする｣と聞いた時は吃驚した。大切な従兄弟だから、と応援して初めての舞台を見に行けばお客さんは全くおらず、お世辞にも上手いと言えない棒読み感の強いセリフ。
それに加えて少し古そうな"MANKAIカンパニー"という劇団。
咲也の性格から何か悪い詐欺に騙されてるのではないかと、私の不安はピークに達していた。