【ハイキュー！！】白鳥から烏へ

３１羽 ページ33

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レシーブに失敗したため、次も及川のサーブ。相変わらず狙いは月島のようだ。


その威力もさることながら、及川のサーブの脅威は化け物じみたコントロール能力。普通威力とコントロールはどちらかが強ければどちらかを損なうものだというのに、彼は両方を兼ね備えたサーブを打つ。

的確なコントロールで、サーブは月島のもとへ綺麗に飛んでいく。月島は腕に当てたが、ボールはそのままコート外へ弾け飛んでいった。



「ツッキィィっ！」



青ざめた顔で山口はさけび、菅原とAは悔しそうに顔を歪める。よほど悔しいようで、月島が小さく舌うちをするのが聞こえた。このままではすぐに追いつかれてしまう。

どうするべきかと、Aは頭を回転させていた。レシーブが一朝一夕で席るようになるものでないことくらい分かっている。リベロもいない今、ここにいるメンバーでどうにかその穴を補う他ない。コート上に立つメンバーを見つめながら様々な策をめぐらせる。



「(澤村さんに広い面積をカバーして貰う……？その手もあるけど下手に構成を変えると全体がバラバラになる可能性だって……、)」
「おい大王様！俺も狙え！とってやるー！！」



この状況の打開策を深く考え込み悩んでいるAの耳に届いたのは日向の声だった。顔を上げてみればまるで子供が駄々をこねているかのように手足をばたばたと動かすその姿に、強張っていた表情が緩んでしまう。

自分も相当なヘタクソだというのに俺を狙えという発言。笑ってしまうのも無理もない。ただ、少なくともそんな日向が変えてくれた空気は先程までの重いものとは変わっていた。



「澤村さん！」



Aは澤村を呼び、月島に視線をやって手を動かす。澤村は少し考えたあと考えを理解したようで、大きく頷いた。そして澤村が指示を出し、月島はサイドライン際に移動する。中心を幅広く澤村がカバーする陣形をとったのだ。



「(及川さんのコントロール力は化け物級。それならどうぞ狙ってください。月島を狙って少しでも中心にそれれば澤村さんが拾うし、外へずれればアウトです。より正確に月島を狙おうとしてもそれでいい。そうすれば必然的に威力は弱まる。)」



及川は変わらず月島へサーブを打つ。そして考えどおり先程までより弱くなったそのサーブを、月島は乱しつつも上げて見せた。ボールはそのままネットを越えて相手コートへ向かっていく。チャンスボールでもいい、及川のサーブを上げたことに意味がある。

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