救助をまつ時間 ページ6
.
櫻井さんがいろいろ話しかけてくれて、
江戸の話をしたりしたら笑ってくれたから、
この状況でも、パニックを起こさないで済んだ
のかな…
ホントに好い人で良かった…
もし、気持ち悪い人だったらと思うと私は
二度とエレベーターに乗れなくなっただろう
.
私の仕事を説明しても、普通はあまり分かって
もらえないけど、マスコミ関係だからか、
江戸の仕事も私がしていることも、
すんなり理解してくれた
.
櫻井さんは自分の話はあまりしないから
話すのが苦手なのかな…
マスコミって記者さんなのかも…
私も仕事柄、雑誌社の人とか関わりが
あるから思うんだけど、インタビューとか、
取材とか相手の話を聞くのは得意だけど、
自分の話は苦手って人が結構いるのよね…
コミュ障気味の人もいるし、変わり者も多い…
私も変わり者の一人だけど
外が騒がしくなって、救助がきたのがわかった
私たちは5階と6階の間で止まっていたらしい
レスキュー隊の人がドアを開けてくれたけど
30センチくらいの隙間から脱出しないと
いけなくて、その隙間に体を入れることも、
怖くて躊躇していたら、櫻井さんがまた
「大丈夫だよ、俺が下から支えてあげるから
安心しな」って言ったから、
「うん、ありがとう、頑張る」って思えて
勇気を出して上に手を伸ばした
後はレスキュー隊の人がしっかり手を握って
隙間から引き上げてくれてやっと外に出る事が
できた
次は櫻井さんの番で、彼が引き上げられる
のを皆で見守っていた
数分後、櫻井さんも無事に引き上げられた
もう、涙が止められなくてぼろぼろ泣いて
いたら櫻井さんが私の所にきて、
「良かったなお互いに無事で」って頭を
ポンポンしてくれたから
私も
「あなたがいたからパニックにならずに
済みました、ありがとう」と右手を差し出すと
にっこり笑って
「ありがとう、またね」と言って握手で別れた
.
その後は消防の人なんかに事情をきかれたり
して解放されたのは午前4時を過ぎた頃だった
後でわかったことだけど、救急車や消防車など
出動する騒ぎになっていたらしい
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作成日時：2020年10月9日 23時
