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ドアを開けるのをなんとなく躊躇って、分厚いドアにそっと耳をつける。
...当たり前だけど、何も聞こえない。
少しだけ開けて、中を覗き込んでみる。
椅子に腰をかけて、笑う薮ちゃんと...その向かい側に座って、俺の見たことない顔で笑う慧くんがよくみえた。
...なんだろ、さっきからモヤモヤして、イライラするような。
とりあえず、中に入らないとこれ以上薮ちゃんを待たせるわけには行かない。
｢薮ちゃん、｣
ドアを開けて部屋に入れば、2人がこちらを向いた。
｢おー、涼介おかえり〜｣
｢おかえり、なさいませ...｣
さっきまでの笑顔とは打って変わって、なんだか少し焦ったような、そんな顔をして俺を迎える慧くんにも、もやもやする。
｢ただいま。ごめん、今日忘れてた授業なこと｣
｢おいおいしっかり覚えとけよな〜｣
自分の机につくと同時に慧くんがトコトコとこの場を離れようとする。
｢慧くん、どこ行くの？｣
びくっとした体。さてはバレないように出ていこうとした？そんなの無駄なのに。
｢あ...お勉強が始まるなら、私は邪魔かなと...｣
｢...そ、。終わったら戻ってきてね。｣
｢はい、...。｣
なんであんなにビクビクして俺に話すの？
昨日は徴発的な目で見てきたと思ったら急にふわりと笑って見せたくせに。
｢さーて、始めっか。｣
｢うん...｣
薮ちゃんが机に向き直り、適当に教材をペラペラと捲る。
｢ねぇ、薮ちゃん｣
｢んー？｣
｢慧くんと...何話してたの？｣
｢え？別に大したことじゃねぇよ？まだ会って1時間ぐらいだし｣
でも...慧くんあんな笑顔で話してた。
俺とはそんな笑顔...
｢昨日来たばっかなんだってな。まだお前とは全然話せてないって言ってたぞ｣
｢あぁ...まぁ、...｣
｢よく喋る子だな。楽しいよ｣
｢喋るん...だ、｣
｢おう、俺が来る前は有岡とか八乙女とも話してたし｣
...まだ、俺は慧くんと数時間しか一緒にいないから、仕方ないのは分かってる。
けど、他の奴らに先越された感が半端なくて、...このグルグルもやもやするものは、それに対する不満だということがなんとなくわかった。
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