２９ 相澤Side ページ30
看護師に流速の病室を聞くと、丁度その流速の病室で緊急アラームが鳴っているらしい
緊急アラームは、患者の生命が危ない時にも鳴るが、点滴が抜けたときにも鳴るらしい
絶対抜け出そうとしてるな
慌てて流速の病室に向かう医師達を横目に、俺はマイクに連絡を取り、病院の入り口へと向かった
流速の病室から入り口は少し離れているため、今から向かっても間に合う筈だ
ギリギリではあったが間に合い、無事流速を病室に連れ戻すことができた
マイク「いくら病院嫌いとはいえ、まさか抜け出そうとするとは思わなかったな！」
『それだけ嫌いなんだろうな』
もしくは…抜け出さなければならない事情があったか…
にしても、あの反応からするに流速が二重人格であることは間違いないだろう
俺が二重人格だろと言った時、黙っていた
否定も肯定もしなかったが、あの無言は肯定ととらえていいだろう
となるといくつか疑問がでてくる
大前提として、二重人格は決して生まれた時からあるものではない
二重人格ー正式には解離性同一性障害ーは神経症の一つ
主な原因として幼少期に虐待や育児放棄をうけていたこと、人間関係でのつらい経験やストレス、死を予感するような体験などが挙げられる
いずれも自身が受けたつらい経験が原因だ
となると流速のつらい経験とは何なのだろうか
流速の入学が決まった時点から、調査をしたがそれらしきものは見つからなかった
あるとすれば、流速の母親は流速が幼い頃に死亡している
原因は敵による襲撃で殺された
その時、たまたま家族で買い物の途中だったらしい
そして、たまたま別行にあったらしい動をしていたところをてきのしゅうげき
喧騒でわからなかったらしいが、もしもその時近くに流速がいて、母親が殺されているのを見たとしたら…
いくら幼いとはいえ…いや、幼かったからこそ、その光景はショックだったのではないか
もちろん、見ていない可能性もあるがそうでない場合…流速が二重人格である原因はたった一つ…
…父親からの、虐待だ…
調べたところによると、流速の父親は去年まで有力な政治家で、今も地元で政治活動をしているらしい
一見すると全然虐待とかする感じではないのだが、人は見かけによらないからな…
詳しく調査する必要がありそうだ…
流速にも、目が覚めたら色々聞かないとな…
担任として、ヒーローとして…
生徒を、一人の少女を…救う
俺はマイクが帰り、機械の音だけが響く病室の中で、そう誓った
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作者名：おにぎりせんべい | 作成日時：2023年11月23日 0時
