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どうしてか僕は、新クラスで寂しそうな表情をしているキミから、目が離せなくなっていて、それは教師としてだと当然のように思っていた。
初めての二者懇談、担任になって成績を見た時に気づいていた。 元から才能として出来る訳じゃない、だけど、確実に点数も伸びていて、必死な努力が伝わってきた。
「Aさん、頑張ってるねぇ」
ゆら、と瞳が揺れる。
意外そうな、驚いたような。
それでいて、どこか嬉しそうな……。
褒めるたびに、表情が柔らかくなるのが
手に取るように分かった。
(かわいらしい表情するなぁ)
高校生だからか。
若いっていいなぁとぼんやり考えていた。
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新学期が始まったばかりの時よりも
キミは楽しそうに笑うことが増えた。
(良かった、楽しそうで)
授業と授業の間の休み時間、微笑ましく見ていると、不意に視線がぶつかるもんだから、動揺を隠して笑った。
大人だからね、余裕見せないと。
分かりやすく顔を赤らめてふい、と逸らす仕草に、思わずキュッと胸を掴まれて、やれやれと自分にため息をつく。
これだからおじさんは。
やだおついちさん変態!
なんて、仲の良い友人の兄者と弟者に言われそうだ。
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分からないと問題を僕に持ってくるのはだいたいAちゃんで、他の生徒にも見習ってもらいたいものだと思う。
他に来たとしてもくだらない話にしか誘われない。
いつも通りだと思っていた。
Aちゃんが友達にからかわれていることも。
こんなおじさんもからかいの対象になるのかと最初は驚いたけれど、満更でもなかった。
ただ、説明してみてもいつものような相槌はなく、不意に様子を見ると、思いの外距離は近くて、
「___っ、あ、聞いてなかったんだ、ひどいなぁ、もうー」
冗談のように、笑ってみせた。
おかしいな、何でこんなに動揺しちゃうんだろう。
いつもなら、何でもないことと流せるのに。
もう一度様子を見ると、何だか深刻そうに考え込んでる。
___疲れてるのかな
ポケットを探ると、手には硬い感触。
こんなものしかないのかと迷ったけれど、
口実なんか、何でも良かった。
ただ、笑顔にしたいと、思った。
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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時