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「……お、とじゃさん、どうして、っ」
「……、A」
「私なんかのこと、」
「……なんか、なんて言わないで」
痛みに顔を歪めた彼は、苦しそうに笑う。
……どうして。
私を庇っても、なにもない。
私の代わりなど、いくらでもいるというのに。
「自分のこと、大切にして」
「私が壊れても、代わりが、」
「いないよ」
真っ直ぐな瞳が、私を映す。
「Aの代わりなんて、いない」
肩から流れる血が、彼の弱々しい笑顔が、私の胸を、ひどく苦しくする。
「泣かないで、A」
そう言われて、はっとした。
私、泣いているの?
「A、逃げて」
「え……?」
「彼らが来る前に」
ふと、視線を向ければ、人間である弟者さんを撃ってしまったことによる混乱で、足が止まっていた彼らが、こちらに来ようとしていた。
「でも、」
「必ず迎えに行くから」
「弟者さん、」
「A、……お願い、きみを失いたくないんだ」
ここへ、と小さく呟いた彼は、私に小さな紙切れを渡す。
「弟者さん……私、あなたが好きです、」
「俺も好きだよ」
「……っ、だから、」
「うん、少しだけ、待ってて」
そっと私の涙を拭うと、彼は笑った。
「おい、待て!!」
数人が、こちらの動きに気付いて走り出す。
発砲音が、ふたつ。
大きな衝撃とともに、足がふらつく。
右足から、青い液体が、漏れていた。
それでも、構わずに走った。
捕まるわけにはいかない。
待っていると、約束したのだから。
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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時