#BECOME ページ16
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「Aっ、こっちだ!」
弟者さんのたくましい手が、私の腕を引く。
___あぁ、どうして。
私は、変わりたくなかったのに。
私は、アンドロイド。
それも、恐れ多いほどに、幸せな。
革命を起こそうとするアンドロイドと、それに恐怖を抱いた人間の、本来誰も望まない戦いは、次第にひどくなっている。
『きみの名前は、Aだよ』
『A、ありがとう』
『好きだよ、A』
いつも優しい笑顔と声で、私の名前を呼んでくれる彼を、とても大切に思っていた。
人間である彼に、アンドロイドの私が、好きだという感情を持つことは、おこがましい気がして、迷惑になる気がして。
私は彼が笑ってくれているのなら、それだけでいいと思っていた。
側にいさせてもらえるだけで、この上ない幸せを感じていた。
「あっちにいるぞ!!」
「A、こっち!」
息が上がってもなお、彼は私の手を引いて走る。
アンドロイドは脅威だとみたこの国のお偉いさんは、全てのアンドロイドの処分を命じた。
___分かっているつもりだ、私は、モノ。
いつかは壊れて、忘れられて……。
だったらいっそ、今この瞬間に。
幸せを感じられる、この瞬間に、停止してしまったほうがいいのかもしれない。
「A!!」
彼の手を、振りほどく。
どうかいつまでも、笑っていて。
拳銃を向けてこちらに走ってくる、人間である彼らに向き合うと、弟者さんに危害が加わらないように、精一杯腕を広げた。
パァン、と乾いた銃声が、ひとつ。
「……っ、」
ドサ、と倒れ込んだ私の目に映ったのは、青い血……
______ではなく、ひどく鮮やかな、赤い血だった。
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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時