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#届かない ページ15

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「ねぇA、今日もご飯美味しそうだね」





机の上に並ぶ豪華なご飯は、僕の大好きなものばかり。


頑張ってくれたんだなぁ。


こんなに好きでいてくれるなんて、僕にはもったいないほど素敵な彼女だ。






いつもおついちさん、おついちさん、と笑う笑顔はかわいくて、僕が抱きしめてもすっぽり納まってしまうほど小柄で。


ちょっぴり泣き虫だけど、僕が頭を撫でて、大丈夫だよ、って笑えば、最後は笑ってありがとうと僕の大好きな笑顔を向けてくれる。


好きだよ、って言うと、少しだけ頬を朱に染めて、私も好きですって言ってくれる。



神様がくれた、僕の一番の宝物。







「そういえばさ、この前は楽しかったね」









二人で行った、遊園地。



おじさんにはどうなのかなぁ、でもAが行きたいって言ってたしなぁ、と思いながら行ったその場所は、想像よりずっと楽しくて、二人で学生に負けないくらいはしゃいだのを覚えている。




さすがに、お化け屋敷はびびってかっこいいところはみせられなかったけど、それでも最後まで手を離さなかったというか、離せなかった僕に、おついちさんかっこよかったです、と照れて笑ってくれた彼女は、僕の喜ばせ方を誰よりも知っているようだ。




思い出に浸っていた僕は、はっとしてAを見ると、その顔は浮かない。







「A?」







僕が呼びかけても、彼女は振り向かない。

それどころか、遠くを見つめているようだ。







「A、」








もう一度、呼んでみる。

すると、じわりと彼女の瞳に雫が浮かんできた。








「A、泣かないで、」

「おついちさん、」

「うん、どうしたの?」

「おついちさん……っ、どこ行っちゃったの、」









僕はふと、胸が苦しくなるのを感じた。


___もう僕は、この世界にいないのだ。



僕は事故に巻き込まれ、彼女の元へは帰ることができなかった。



彼女の瞳から、ぽろぽろと溢れる涙は、手に持っている、あの日の、遊園地デートで撮った写真に、染みを作っていく。








「A……、」









抱きしめても、頭を撫でても、君は笑ってはくれない。

そばにいるのに、伝わらない。







「おついちさん、っ、」








ただ一人で、呼び続ける声に、僕は胸が張り裂けそうになる。







「ごめんね、A、」









僕は、そばにいるよ。

きみの幸せを、願ってるよ。







___もうこの声も、届かない。






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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時

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