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「A、っ、」

「……大丈夫、平気、」







あまりにも弟者くんが苦しそうに名前を呼ぶから、
私は必死に体を起こして笑顔を作る。


肩に当たった斧の刃は、私の血で赤に染まり鈍い音を立てて落ちた。









「ごめん、A、俺のせいで、」

「私は大丈夫、だから、」









痛む肩を押さえて、女の子に視線を向けると
目に涙を溜めて、近寄ってくる。









「弟者くん、私ができる限りこの子を守る、だから」

「そんな怪我じゃいくらなんでも」

「……出来るよ、」

「A、」









手元にある包帯で、自分の肩をぐるぐると巻く。

ギュッと縛ると、じん、とした。









「……私には弟者くんがついてる、」









君が何度もくれた言葉を、思い出す。

いつだって励ましてくれた。






私が弟者くんの真似をして、にっと笑うと、
彼は眉を下げて、笑い返した。









「……そうだな、」









弟者くんが決心したように、銃を構えた。

それを合図に、私も立ち上がり、強く銃を握りしめる。









肩の痛みは増していて、もう包帯に血が滲んでいた。

まだ、利き手じゃなかったことが、不幸中の幸いだろう。

私は女の子の手を引いて、壁を背にして銃を構えた。









「目、閉じていられる?」

「……うん、」









コクン、と素直に頷くと、目を閉じたのを確認して、私はまた、引き金を引いた。


腕にかかる負荷と衝撃で、肩が痛み意識が遠のきそうになるのを、グッとこらえた。









.









どれほど時間が経っただろう。

ふと、血の抜けるのを感じて、私は思わず壁にもたれる。









「お姉ちゃん、大丈夫?」









繋いでいた手が離れたからか、女の子が心配そうに私を覗き込む。









「大丈夫だよ、でもね、あそこのお兄ちゃんの所まで走っていけるかな、?」

「どうして?」

「……次はお兄ちゃんが守ってくれるから」

「お姉ちゃんは?」

「お姉ちゃんは……少しだけ、休憩かな?」

「そっかぁ、分かった……ありがとう、お姉ちゃん、また後でね!」









うん、と言うと、女の子は小走りで弟者くんの元へ向かう。









「……ごめんね、」









ずるずる、と私は座り込み、目を伏せた。









「弟者くん、」









弟者くんと女の子の背を最後に、目を閉じる。









「好きだったよ、」







.

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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時

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