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「兄者のナンパからだったの!?」
あの時から大きくなった弟者くんが、
心底楽しそうに笑う。
ゲーム関連で仲良くなったおついちさんまで、あの兄者がねぇ!と笑っている。
私はあれから兄者とゲームをする仲になり、
今では付き合っている。
二人が馴れ初めをしつこく聞くもんだから、私は隠すこともないだろうと話始めた。
懐かしいなぁ、と思っていると、バタンとドアの閉まる音がする。
「あ、おかえり兄者、」
「おう、」
弟者くんとおついちさんが、じっと兄者の顔を見つめる。
その口は耐えられない、とでも言うように、ニヤニヤとしている。
「……何?」
「いやー?」
弟者くんがなんでもない、と手を振る。
「A、なんかあった?」
「ん?いや、べつに」
「うちにあるけど、やる?」
おついちさんが、くくく、と口に手を当てながら、兄者のことをみた。
「……な、」
「おーついちさん!ダメだって!」
「だってねぇ、弟者くん!」
少しして、なんのことか理解した兄者は、お前ら!と笑う弟者くんとおついちさんをベシ、と叩く。
兄者はほんのり顔を赤らめて、私のもとに来て優しくデコピンをした。
「あんま変なこと言うなよ、」
少しだけ拗ねたように言う兄者に、私は笑ってごめん、と謝る。
「なんでAちゃんだけデコピンなの!」
「るせ、」
先に飲み始めていた二人は、酔いが回ってきたのか、いつもよりハイになっている。
はぁ、とため息をついた兄者は、あいつら覚えとけよ、と笑いながら言った。
「でも、なんであの時声かけてくれたの?」
「Aが小さい子供みたいに欲しい!って顔してたから」
「えぇ、そんな顔してた?」
「やる?って言ったら目キラキラさせてさ」
「……もう恥ずかしいからいい、」
そんなに子供に見えていたのか、と恥ずかしくなって俯くと、あの日と同じようにふはっ、と笑って、小さく囁いた。
「嘘、ずっと好きだったからだよ、」
サラ、とそんなことを言う兄者も、兄者が私を好きでいてくれたことも、あの頃の私は知らない。
少し耳を赤くして、着替えてくるわ、と呟くと、そそくさと部屋の奥に向かう背中を、私は高鳴る胸を抑えて見つめていた。
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作者名:日向 | 作成日時:2017年10月21日 23時