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毎日毎日、大寿の暴力を受けた。初めて大寿に逆らったあの日からは、紬も加わった。
家族の問題に紬を巻き込んでしまって良いのかと、罪悪感に押しつぶされそうなときもあった。耐えきれずに『家に来ちゃ駄目だ』と忠告した日もあった。
でも、そんなことお構いなしに紬は家に遊びに来てた。あれはほとんど押しかけだったとも思う。
家に帰っても紬は母親による暴力を受ける。だからアタシの家に来ようが暴力を受けるのは一緒だと言った。
そうは言いつつも、本当はアタシたちを守るために家に来てくれてる。そのことが嬉しかった。
『トイレの電気消し忘れたのどっち?』
『あ…あ、』
『アタシ!!』
『あー…ごめん大寿。宿題でわかんないトコあったからさ……私がユズを急かしちゃって。』
『オイ、なんで嘘をつく。』
『違うって嘘じゃないって!』
『そうだよ!アタシが、』
『便座が上がってたぞ。便座上げんのは男だけだ。』
もう何を言っても無駄だ。大寿が八戒を連れて行こうとする。
苦し紛れに叫んだ。
『もう八戒を叩かないで!アタシが代わりに罰を受けるから!』
『んじゃぁ私がユズの代わりを、あ待って?ユズそんな目で見ないで??
……私たちが八戒のぶんを受ける。だから、ユズのお願いを通してください。』
お願いします、と敬語まで使って、普段だったら絶対に下げない頭を大寿に向かって下げた。
アタシもそれに続いて、大寿に土下座する。
『じゃあ、テメェらはアレだな。これから二人分殴られるわけだ。それでいいんだな?柚葉、紬。』
この日、紬と誓った。
紬のことはアタシが守る
アタシのことは紬が守る
八戒のことは2人で守る
約束した。でも、それは子供の約束だった。
紬と出会った年の冬。多分クリスマスだった。
パタリと、紬は家に来なくなった。
大寿は『怖気づいたか』とか言ってたけど、アタシは違うってわかってた。
だからある日、こっそり紬の家に行った。
でも、そこはもぬけの殻。
門限の時間が過ぎても、紬の家の前で待ち続けた。寒くても待ち続けた。
やっと、人一人現れた。香水とお酒の匂いがひどい女の人。
『あの……紬は?』
『知らねぇよ。あんな子、とっくの昔に捨ててやった。』
どっかでくたばってんじゃねぇの?
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️めっちゃこの物語良き過ぎます(๑•̀ㅂ•́)و✧更新されるのを楽しみにしています(*^^*)🎵𓈒𓏸 (2023年2月3日 17時) (レス) @page43 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、八戒固まった、このシーン好き! (2022年11月6日 19時) (レス) @page18 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、これって、あの短編にあったシーン! (2022年11月3日 13時) (レス) @page11 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 場地さんそのセリフ!!!夢主、鈍感だよって、ハロウィンのは大泣き場面やぁ…… (2022年10月30日 22時) (レス) @page7 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
巫缶(プロフ) - 違う!そういう意味じゃない!(多分) (2022年10月30日 21時) (レス) @page7 id: 926dc0c43f (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年10月28日 16時