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「よーっすユズ、八戒。」
「よっ、紬。珍しく時間ギリギリだったじゃん。」
「いつもはもっと早いのにね。」
「いやー失敬失敬。ちょっと寝不足でさぁ。」
なんか妙に眠れんかった。なんでって?自分でもわからん。悪夢でも見たのだろうか。
おかげさまで今日の学校の授業は爆睡。気づけば授業が終わっていた。朝から放課後へタイムトリップした気分である。
今日の放課後はユズと八戒とでボーリングする約束をしてたのだ。
柴家の方々とはちょっと間が空いたりはしたが小学二年生の頃からの付き合いである。
出会いは墓場。
母親と二人暮らしだったアパートの部屋の隅っこ以外での居場所は父親が眠る墓だったため、よく行っていた。ある日そこで女の子がすすり泣く声がした。
『いつかまたギュってしてネ。』
涙を流しながら歪な笑顔を浮かべる女の子。
右頬は思いっきりブッ腫れていた。それには見覚えがあった。
機嫌が悪い母親にぶん殴られ、その次の日に窓ガラスに映っていた自分にできるのと同じような痣。
多分、この子も殴られてるんだ。私と同じような劣悪な環境下に置かれてる。
私と似てる
だから同情した。
その頃は、自分のことで精一杯で周りのことなんてどうでも良かった私が、珍しく興味を持ったのだ。
今思えば、その子を助けることで、自分も報われるのでは、救われるのではというしょうもないことを考えてたのかもしれない。笑っちまうくらい独りよがりな感情だ。
今は違うけど。
『やっほ。』
『だっ……誰?』
『………ほっぺた、スンゴイ腫れてんね。』
『………アンタもね。』
その子がユズ――柴柚葉だった。
初めて母親以外に人を家に上げた。
お互いの怪我をありあわせのもので幼いながらに手当して、その後は傷口を舐め合うようにして駄弁った。
それからというものの、墓場にたびたび足を運び、仲を深めていった。
己の心を満たすために関わりを持ったその子を、いつの間にか唯一無二の存在となった。
エマが親友だとしたら、ユズとは姉妹としての絆が結ばれたのだ。
ある日、『ユズの家に行きたい!』とわがままを言って、ユズん家に上がらせてもらった。
そこで出会ったのがユズの弟の八戒。
八戒とも、何度も家にお邪魔していくうちに姉弟のように仲睦まじくなった。
ところがある日、
『ユズハー、はっかーい。
なに勝手に、知らねぇ人間を家に上げてんだ。』
柴家の王で、ユズたちに暴力を振るってる、柴大寿と鉢合わせした。
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️めっちゃこの物語良き過ぎます(๑•̀ㅂ•́)و✧更新されるのを楽しみにしています(*^^*)🎵𓈒𓏸 (2023年2月3日 17時) (レス) @page43 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、八戒固まった、このシーン好き! (2022年11月6日 19時) (レス) @page18 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、これって、あの短編にあったシーン! (2022年11月3日 13時) (レス) @page11 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 場地さんそのセリフ!!!夢主、鈍感だよって、ハロウィンのは大泣き場面やぁ…… (2022年10月30日 22時) (レス) @page7 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
巫缶(プロフ) - 違う!そういう意味じゃない!(多分) (2022年10月30日 21時) (レス) @page7 id: 926dc0c43f (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年10月28日 16時