薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ7)

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「じゃ、また明日な。水溜り踏むなよ」

「うん！気を付ける～」

放課後。
バスを降りてユンギが私の足元にある水溜りを指差しながら言う。

ほんとかよ、とユンギが信用できないと言うように溜息をつくのは、先程私が大学前で盛大に水溜りを踏み付けて靴下と靴を全滅させたからだろう。
「今度こそは大丈夫！」と念を押してユンギに手を振ると、一回だけ手を上げて去っていった。

バス停から家までは比較的近い位置にある。
私は傘を差しながらスマホを開くとカトクに2件通知が来ていることに気付いた。
一番上はグクで「今日帰り7時過ぎるけど夕飯待っててヌナ～」という文と共に可愛い絵文字を添えている。
そんなグクが可愛くてくすり、と笑いながら次の通知を見ると意外にもユンギからだった。

「…スマホを見ながら歩くと水溜りにまた突っ込むから辞めろよ。まぁこれ見てるときはもう遅いと思うけど＿＿＿ってうわッ、！！」

ユンギからの文を読み上げた途端、片足は割と大きめの水溜りに浸かり水飛沫が顔面まで飛んでくる。
あまりのミラクルに私は思わず文と水溜りを交互に見てしまった。

「…ユンギって超能力者？」

＊

ぐちゃぐちゃになった足元と、少し泥が着いた服。
そんな状態でやっと家にたどり着いた私は鞄から鍵を出そうと傘を肩に置く。

しかし神様は意地悪らしい、肩に中々傘が安定してくれなくて私はバランスを崩しそうになりながら鞄の中に手を伸ばす。
そして中々鍵が見当たらず中身を引っ掻き回してるうちに足元が覚束なくなって遂に私は尻餅をついた。

「いっ…たぁ、うぅーー…。」

手には鍵を掴んでいたけれど、鞄の中身は濡れた地面にぶち撒けるし服は汚れるしで最悪な気分になる。
何でこんな事もできないんだろう、と涙目になりながらも私は鞄を片付けて傘を持って立ち上がった。

ふと隣のソクジンの家に目線を移した時だった。
透明の傘越しに映ったものに私は目を見開いた。

「っ、え。」

ソクジンの家の門に寄りかかるようにして立っているのは雨でずぶ濡れになったソクジンで、私は息が止まりそうになる。
どうして家に入らないのか、そこに立っているのか、聞きたいこと知りたい事が沢山ありすぎて私の頭は混乱していた。
…どうしよう、あのままだと風邪引いちゃう。

『＿＿もう俺に関わらないで。』

頭にソクジンの言葉が響いて足が怯む。
だけど私にはほっとく事なんかできなくて、
ソクジンの元へと走り出した。