薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ16)

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ソクジンから話題が振られるとは思わず、
私は一瞬フリーズしたように固まってしまう。

…まさかソクジンから話しかけてきたの、？

「ゆ、ユンギ今日風邪引いたみたいで、」

「へえ」

たじたじになりながらもそう伝えれば、
ソクジンの興味なさそうな返事が返ってくる。
ソクジンは私の袋に視線を向けてから再びふい、と逸らしてしまう。

「これからお見舞いってワケね」と私に言ってるのかよく分からない声量で呟きながら、そのまま歩き出す。
足は昇降口に向かっていて、私もついていく様に跡を追いかけた。

「…随分と懐いてるな」

「え？」

「それで？外は土砂降りだけど、お前はずぶ濡れでそのユンギとやらのお見舞いに行くんだ？熱心だね」

ソクジンの言葉に私はそのまま外へと視線を向けると朝とは違い外は大雨で、思わずコンビニの袋を落としそうになる。

…うそ、傘持ってない。
今思えばニュースで9時過ぎから雨に注意と言っていた気がするけど、何せ私もグクも朝は忙しかったのでそこまで気が回っていなかった。

「……どうしよう、」

このままじゃユンギのお見舞いどころか、家にも帰れない。
大学は傘を貸してもらえるのだろうか、？と色々考えていた時、

徐に隣に居たソクジンが外に向かいながら、いつの間にか手にしていた傘を広げ始める。
その行動に私が目を白黒させていると、ソクジンは此方を向いて一言。

「早く入って」

＊

今日は一体どうしてしまったのだろう。

私はソクジンと同じ傘に入りコンビニの袋を抱えながらそれだけを考える。
朝からソクジンは私の事を何だかんだ助けてくれている。顔は凄く不機嫌そうだから内心は嫌だと思ってる事はすぐ分かるけど。

…どうして、私なんかに、。

「ねえ」

「…っ、え、？」

「もうちょっと寄ってくれないと
傘入れた意味ないでしょ」

その瞬間、肩をぐっと抱き寄せられて、
微妙な距離感を保っていたのが一気に近くなる。
…どうしよう、心臓の音がっ、

＿これ以上私に優しくされたら、私…。
このままだと意味のない期待をソクジンにしてしまう。
私は必死に赤くなる顔を抑えた。

丁度その時、私たちは大学の門を抜けて、駅の方に曲がろうと歩いていた。
すると背後から足音と共に「チョンさん」という声が聞こえて私は驚きつつも振り返る。

「あ、チャンくん…」

そこには傘をさしたチャンくんが立っていた。