薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ14)

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どうしよう、

電車の中なのに鳴ってしまう着信音。
私は焦り過ぎてどうしたらいいか分からず、
切ることもできないまま混乱していた。

ほかの人の目線が集中してるのがわかる。
心の中で何度も謝りながら、切ろうと試みるけど違う所を押してホームになってしまった。
色んな所を押してみるけど、中々元の画面には戻らなくて非通知は鳴り続けたまま。
私が思わず涙目になっていると、手の中にあったスマホがすっ、と消えて目を見開く。

スマホの行方を目で追えば、ソクジンが私のスマホを操作していて再び驚いてしまった。
そのままソクジンは電話を切ってくれたのか、ピタリと止む着信音に安堵の溜息が出た。

「なんでマナーモードにしないの？
てかなに非通知って。」

「…最近、沢山掛かってくるの、」

ソクジンは私の声を聞いていたのかいないのか分からないけど、私よりもっと大きな溜息をついてスマホを私の元にかえした。

スマホはマナーモードになっていた。

＊

それから大変だった。

大学に行くまでの道はソクジンの跡を追っ駆けてやっと辿り着くことができた。
ソクジンは凄い嫌な顔してたけど直接は何も言ってこなかった。

そして1限の講義を確認する為にスマホで大学のマイページを見ながら校内を歩いてたらいつのまにか真反対に辿り着き、遅刻寸前で涙目になってると偶々ロッカー帰りのソクジンと遭遇。
察したのか溜息をついたソクジンは無言で私の腕を引っ張り、気付いたら教室に着いていた。

「偶々俺も此処だっただけだから。」

そう言って何処かへ行ってしまうソクジンにお礼が言えないまま2限目へと時間は過ぎる。
2限は幸運な事に1限と同じ教室。
目を必死に開けながら、この時間はユンギも同じ講義なのでユンギの分までノートを写してその時間は終わった。

その日私は2限で終わりだったので、売店でユンギのお見舞いに食べ物とかを買おうと思い席を立つ。お昼の時間っていうのもあり、廊下には人で溢れかえっていた。
腕の中にはまだ2限分の教科書があり少し重い。
私が覚束ない足取りで歩いていたせいか、向かいから来た人とぶつかり教科書を盛大に落としてしまった。

「ぁ」

早く拾わないと、みんなの迷惑になっちゃう。
手を伸ばした時に私の教科書に気づかなかった人が隅を踏んでしまい、手を引っ込めた。

ごめん！って声が聞こえてまた遠くなっていく。
何だかこの状況が寂しくて、ユンギ…と呟いて顔を歪めた。