薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ13)

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結局私は1人で大学に行く事になり、
手元にはグクが丁寧に書いた地図と路線の説明が握られている。

グクは私が家を出る最後の最後まで「やっぱり俺が一緒に…」と言っていたけど、これも私が成長する為のチャンスだと思い押し切った。

「えっと、こっちだよね？」

バスは一本しかないので何とかクリアできたけど、駅に着いてから至難の業だった。
究極の方向音痴の私には東西南北という言葉は通じない。それを見越してるグクの地図には○○の看板がある方とか、分かりやすく書かれていて、なんとか改札に入ることが出来た。

路線の名前を何度も地図と見比べている時。
突然スマホの着信音が鳴って肩を揺らす。
グクかな？、と思って画面を見た時、私は青ざめた。

「…非通知」

今まで認識してなかった恐怖が私を蝕むのが分かる。
ずっとユンギやグクの居る時にしか掛かってこなかったその電話は、改めて1人の時に来ると怖くて立ち竦んでしまう。

隣に誰も居ないのが怖くて、私はとにかく電車に乗らなきゃと思いながらホームを駆ける。
丁度いつも乗ってる電車と同じ模様の電車が来て乗り込もうとした時、
ぐっ、と誰かに腕を引っ張られて私の身体はホームへと戻された。

「っ、何やってんの」

はぁ、と息を切らして私の腕を掴むのは、
眉に皺を寄せたソクジンだった。

＊

ガタン、と揺れる車内。
流れる景色を見ながら私はちらりと横に立つソクジンに目線を移した。

「(…気まずい)」

正確に言えばわたしだけが気まずい。
ソクジンは真顔で隣でスマホをいじっているけど、私にはスマホを弄る余裕なんて無かった。

＿＿ソクジンは反対の路線に乗り込もうとした私を態々引き留めてこの電車に乗せてくれた。

「そっち反対なんだけど、馬鹿なの？」

イライラしてるのか顔が怖いソクジンは私の手をそのまま引っ張って正しい路線に乗せてくれて、
今はひたすら大学最寄りまでの時間になっている。

大学の最寄りは終点地点で、朝の時間帯的に通勤ラッシュのため人は多く私とソクジンの距離も決して遠くは無かった。

横目に見るソクジンは眼は伏せられていて長い睫毛が見える。
きり、とした眉毛に額には多少の汗。
全てに見惚れてしまうほど、美しかった。

「ねえ、見ないでくれる？」

「へ、！？ご、ごめん…なさい、」

伏せられていた目が此方を向いて慌てて逸らす。
見てしまっていた事がバレて顔が熱くなった。

＿＿そのとき、

「っ、非通知…」