薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ11)

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「…おい、大丈夫か？」

ユンギの声で意識が覚醒する。
あの夜からずっとぼう、とする事が増えた私は度々ユンギに突かれては現実に引き戻される。

「う、うん…ごめんまた、」

「別に良いけど、あの日以降あの人と何も話してないの？」

「うん、」

あの日ソクジンが私に背を向けて出て行ったあと、堪らず私は泣いてしまいグクにまた迷惑をかけた。

どんなに冷たい言葉で突き放されても、
タオルを取って私に被せてくれた時の柔軟剤の香りとか、ソクジンに誤って抱きついてしまった時の香りが離れてくれなくて。
好きだなぁって思ってしまう自分が嫌だった。

『…気付いたらオッパでもう呼べなくて咄嗟にジンくんって呼んじゃった』

ひたすら泣く私をグクはずっと慰めてくれて。
その次の日もグクから話を聞いていたのか、私の好きなジュースとかアイスをユンギは奢ってくれたりして励まされた。

なのに、あれから暫く経ってもソクジンの事が頭から離れなくて、大学ですれ違う度に胸が痛んだ。

「まぁ…あの人のことも大事だけど、
俺はあの事の方が心配なんだけど。」

「あの事？」

私が首を傾げると、丁度タイミングよく鳴るスマホ。画面を見れば非通知からで、私はやっとユンギの言葉の意味を理解した。

実を言うと私は最近謎の無言電話に悩まされている。必ず一日数回は掛かってきて出ても何も話さない。
当初は確かに気持ち悪いと思ったけど私の心は今別の事で打撃を受けていたからあまり気にしてはいなかった。
…因みにグクとユンギにこの事をさり気なく話したときは本気で心配された。

「チッ…陰湿な奴。
Aももっと危機感持てよ」

「う、うん…一応気をつけてるよ？」

「たった今まで忘れてたやつが言うか。」

グクは大袈裟に警察に言う～とか言ってたけど、被害なんて何も無いし…と私だけ呑気だ。

ユンギが溜息をついてから「メシだメシ」と席を立つのに続いて私も立つ。
ユンギは今日もカレーを頼むみたいで、私はどうしようかなぁ、と思っていた時。

ふと目の前で誰かが止まり影が掛かる。
不思議に思って顔を上げるとそこには男の人が立っていた。

「ち、チョンさん…偶然だね」

「あ、チャンくん。」

私が手を振ると、何ともよく分からない表情をしてそのままふらりと消えていくチャンくんを横目にユンギが不甲斐ない顔で私を見た。

「え、誰アイツ。」