薄紅色の靭葛【JIN】 (ページ1)

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「俺が居ないと駄目だなあ、Aは」

そう言って笑いながら私の手を引く幼馴染は
ある日突然私に関わらなくなりました。

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「Aいい加減起きろ」

そんな声が聞こえて私はふと顔を上げる。
暫く微睡みに浸りながら状況をゆっくりと噛み砕いていると、隣から手が伸びてきた。
その方向を見ればユンギが「寝癖付いてるぞ」と言って軽く笑った。

そこでやっと自分が講義中居眠りをして、ユンギに起こされたのだと理解しあくびをひとつこぼした。

「目覚ませ、昼食いにいくぞ」

「…うん、行く。」

ユンギが伸びをして席を立つのに続いて私も急いで教科書などの手荷物を抱えて席を立つ。
そんな中、慌てた拍子に自分の腕の中から筆箱がすり抜けたのを私は「あ」と声を上げた。
床に吸い込まれる様に筆箱が落ちていくのを、私は手を伸ばせないまま見つめる。

落ちる、と思った時。
ユンギは咄嗟に手を伸ばして筆箱をキャッチすると
私の腕の中ぽいっと戻した。

「慌てんな、置いてかねえから」

「あ、ありがとう…」

俗に言うと私は”おっちょこちょい”だ。
もっと酷い言い方をすればポンコツとか出来損ないとも言う。
爪が甘いのか注意不足なのか不器用なのか、
はたまたそれらが全て複雑に組み合わさった特性を持ってるのかもしれない。
つまり私は周りの助けがないとやらかしまくってしまう程、運が無い人だった。

幸いなことに周りはそんな私を疎む訳でもなく、「仕方ないなぁ～」と言いつつも助けてくれる。
そんな皆に甘えてる自分が一番ダメなのだけれど、そのおかげで今まで平穏に過ごせてこれたのかなと思う。

「よく寝てたな、夢でも見たか？」

「そ、そんな寝てないよ！」

揶揄う様に笑って廊下で私の隣に並ぶのは中学からの同級生のミン・ユンギ。
彼は私と仲良くしてくれて面倒を見てくれるとても頼れる友達だ。

ユンギにはああ言ったけど、実際私は夢を見ていた。
木漏れ日の下、私の手を引いて笑いかけるその人は私にとって＿＿＿

「見て！ソクジン先輩がいる！！」

私達が歩く方向とは逆の方向に歩いていく女の子達はそんな言葉を残して去っていく。
その方向をちらりと見れば、友達と楽しそうに笑う私の幼馴染…キム・ソクジンが居た。

私のひとつ上のソクジンとは家が隣で昔はずっと一緒に居た。
今はもう…違うけど。

その瞳は私とはいつのまにか交わらなくなった。

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