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「私テヒョン先輩と付き合う事になったから」
私がそう言った瞬間、グクの表情から体温が全てぬけたように色が無くなっていくのを見て私は目を見開いた。
氷点下まで達したと錯覚するほど殺伐としたこの空気をどう説明しよう。
目の前に立つグクが一瞬にして今までのグクとは違うのはすぐに分かったし、私がそれを理解した頃には肩に掛けられたグクの手の圧が凄まじくて顔を歪めた。
咄嗟に私はその手を振り払い、空き教室の扉へ向かって駆ける。
焦って口から出たのは、聴くからに怯えていると丸わかりの震えた声と馬鹿な台詞だった。
「て、テヒョン先輩が待ってるから…、
グクとこんなことしてる暇無いからもう行く、」
「…」
私がそう言って扉へ手を掛けようとした時。
何かを叩きつけるような、凄まじい破裂音が私の真横で聞こえて思わず息が止まる。
そして見なくても伝わる背後からの圧迫感に私は足を竦ませた。
は、と上がった息を零しながら恐る恐る自分の真横を見れば私を遮る様に置かれたグクの手。
所謂壁ドンのような状態だけれど、それでドキドキする様な鈍感さは持ち合わせてもいないし、相手の方を振り返る勇気も無い。
「……今、なんて言った?」
低い声がその場に響く。
それは今まで聞いたこともない地を這う様な声色で私は自身を震わせた。
こわい、こわい。こわい。
恐怖が思考を支配して何も正確な判断ができない。
いま、私の背後に居るのは誰なのか、私には到底理解できなくて。
何も言葉を発せずにいると、突然肩をがっと掴まれて私の背中は扉に叩きつけられる。
と同時に視界にはグクが見えて私の喉はひゅ、と音を鳴らした。
「ねえ、もしかして付き合ったとか言った?」
「ぐ、グク…」
体温の無い瞳が私を射抜き、
辛うじて出た言葉はグクの名前。
グクはどこか含みのある笑みを薄っすらと浮かべるとブツブツとなにか喋り出した。
「付き合った?アイツと?
は、?Aは俺のなのに?」
自問自答しながらグクはあ"ーー…と唸りながら目にかかっていた前髪を搔き上げる。
一瞬ギラリと光った瞳は真っ直ぐに私を見下ろして、重圧を掛けた。
足が震えて立つのも精一杯なのに、グクは私を離さないというように肩に力を込める。
きしり、と軋んだ音がして動悸がどんどん早くなった。
「やっぱアイツと一緒に消しとけば良かったなぁ」
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咲綺(プロフ) - 続きが見たいです!! (2020年5月23日 22時) (レス) id: a2e0669daa (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか?めちゃ気になります! (2019年12月6日 18時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
ぐろす - けっこー経ちましたけど更新しないんですかー?楽しみにしてまーす! (2019年12月6日 17時) (レス) id: 63cd4095fc (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか? (2019年10月16日 0時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - とても面白いです!!ヤンデレグクちゃんたまりません。シスコンジミちゃんにも守ってもらって、優男テヒョンにも守ってもらえて主人公ちゃんが羨ましいです(笑)更新楽しみにお待ちしてます! (2019年8月15日 0時) (レス) id: 202f553fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年6月12日 23時