検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:268,567 hit

14 ページ16





『返事は今じゃなくていい。
でも一度考えてくれると嬉しいな』



屋上へ続く階段を下りながら私は先程の彼の言葉を頭の中で何度も繰り返した。
ふわふわする、気持ちも頭も。
全てが経験した事のない新鮮な気持ちで、足取りもどこか軽く感じる。

狭い私の世界に1人増えるだけでこんなにも違うのかと感心してしまうほど今は気分が良い。
にやけてしまう口を抑えながら鞄を取りに行こうと教室に戻った時、
私は目に入ってきた光景に心臓が飛び跳ねた。


「ねえ〜グク〜〜」

「……なに」

教室に居たのはグクとグクの彼女だった。
私は慌てて身を引っ込ませて影へと身を潜める。
会話がぼそぼそと聞こえて、私は自分の呼吸が聞こえてしまわないように口を抑えた。

内容まではっきりと聞こえないけど、
弾んだように明るい彼女さんの声に胸が痛くなる。
さっきの高揚した気分は一気にドン底に落ちてしまったように感じた。

それでもその場から逃げ出せないのは_
どんなに素敵なひとに告白されても、私がグクの事が好きなことには変わりないという確実な証拠だった。





私は鞄を学校に置いたまま帰路に着いた。
「今日は一緒に帰ろうね」というグクの言葉を先に破ったのは私の方なのに、一人で歩く通学路は酷く虚しかった。

唯一あるスマホを開いてカトクを見ればいつのまにかグクのトプ画が変わっている事に気付く。
基本的にストイックなグクはカトクのトプもホームも初期設定のままだったけど、今は彼女との2ショットがトプになっていた。

「……っ、」

気付けば唇を噛んでいた。
じんわりと痛い唇に顔を歪ませた時、ポンっとカトクの通知音が鳴った。
画面をスライドさせてみれば先程カトクを交換した告白してきた彼からだった。

『突然だけど、今週の土曜ダンスの大会があるんだ。良かったら見にきてね』


靄が捌ける様に少し気分が軽くなる。
そんな単純な自分に嫌気が差すけれど、私がグクから離れられる絶好の機会だと思った。

今のままじゃお互い良くない。
グクは彼女と居るべきだし、私はグクから離れるべき、というのは嫌だけど当たり前の事だった。

『見に行くね』

それだけ送って私はスマホを閉じる。
気付けば何故か頰には涙が伝っていた。


くるしい。

15→←13



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (544 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2236人がお気に入り
設定タグ:BTS , 防弾少年団 , ジョングク
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

咲綺(プロフ) - 続きが見たいです!! (2020年5月23日 22時) (レス) id: a2e0669daa (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか?めちゃ気になります! (2019年12月6日 18時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
ぐろす - けっこー経ちましたけど更新しないんですかー?楽しみにしてまーす! (2019年12月6日 17時) (レス) id: 63cd4095fc (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか? (2019年10月16日 0時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - とても面白いです!!ヤンデレグクちゃんたまりません。シスコンジミちゃんにも守ってもらって、優男テヒョンにも守ってもらえて主人公ちゃんが羨ましいです(笑)更新楽しみにお待ちしてます! (2019年8月15日 0時) (レス) id: 202f553fa0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年6月12日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。