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「あの先輩と仲良いの、」
またもや彼女からの誘いを断り、私と中庭でお昼を食べるグクは買ってきた購買のパンを頬張りながら私に訊いてきた。
あの時から今まで一言も会話をしなかったので
突然の声に私は少し反応が遅れた。
呑んでいた野菜ジュースをしっかりと飲み込みながらその質問の返答を考えたがわからなくて、
でも何となく仲良いとは答えちゃいけないと思った。
「…オッパと仲良いよ」
「そ」
結局質問の意図にあまり沿っていないような返答をしてしまい、グクも自分からきいたのに素っ気ない反応しかしなかった。
「いつからAは俺に隠し事するような悪い子になったのかな。」
「え?」
宙を見つめていたグクの目線が私を捉えると、
その綺麗な手をするりと私の頰へ伸ばした。
一気に近くなった距離に変に鼓動が早くなって息苦しい。
…彼女がいるのに、グクはどうしてこんな事するの。
私の事妹みたいな存在としてしかみてないのは知っているけれどそれでも苦しくなる。
「……グクには、関係ないよ」
気付けばそんな事を私は言っていた。
それは胃の底から絞り出した精一杯の反抗。
_私はグクが何を考えているか分からない。
*
気まずい空気が流れたお昼休みを終えて教室に戻ると自分の机の中に一通手紙が入っていた。
なんとなく周りを確認しながらその手紙を手に取る。自分の席に戻っていたグクは男子と楽しそうに話していた。
「……これって」
席に座りながらその手紙の中身を見る。
一瞬女子からの嫌がらせの類かと思ったが、そこには男子の字で私への想いが綴られていた。
最後に「放課後屋上で待ってます」という文で〆られていて、私は息を整えた。
これが悪戯ではないという確信はない。
けれどこれを蔑ろにできる程私の根は腐っていなかった。
こういうものを貰った事はあまり無い。
そもそも昔から私がグクとばかり一緒に居たから仲良くなる男子がそもそも居ない。
…私にはずっとグクしか見えていなかった。
しかし改めてこういうものを貰うと嬉しいという事は今実感している。
大切に丁寧に、手紙を封筒に仕舞い鞄の中にあるファイルへと入れて私は前を向く。
窓から風が少し吹き、暑かった私の頰を撫でた。
それがグクの手の温もりと重なり、少し胸がずきりと痛む。
『今日は一緒に帰ろうね』
私は放課後グクに何も告げず鞄を教室に置いたまま、屋上へと駆けて行った。
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咲綺(プロフ) - 続きが見たいです!! (2020年5月23日 22時) (レス) id: a2e0669daa (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか?めちゃ気になります! (2019年12月6日 18時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
ぐろす - けっこー経ちましたけど更新しないんですかー?楽しみにしてまーす! (2019年12月6日 17時) (レス) id: 63cd4095fc (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか? (2019年10月16日 0時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - とても面白いです!!ヤンデレグクちゃんたまりません。シスコンジミちゃんにも守ってもらって、優男テヒョンにも守ってもらえて主人公ちゃんが羨ましいです(笑)更新楽しみにお待ちしてます! (2019年8月15日 0時) (レス) id: 202f553fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年6月12日 23時