8 ページ8
そして、先程の階段の踊り場へと戻る。
帰りは少し遠回りをして、人目を避けるようにしながら。
コイツ転校初日だろ。何でそんなに迷いなく進めるのだろうか。
｢校内の地図は頭に入れたからな｣
｢…は｣
｢大抵の学生は、職員室前はなるべく通りたくないものだろう。そして、校長室や会議室がある1階の廊下は職員以外はほとんど寄り付くことがない。そして、大体の学校は職員室と校長室は階は違くてもなるべく近くに配置しているものだ。まあ、そこは例外もあるのだが。そこから考えれば、ある程度生徒の少ない廊下は導き出せるわけだ｣
またコイツは心の中を見透かして、ペラペラと話し始める。
久しぶりのこの感覚は全く慣れないもので、本当に嫌になる。なのに、懐かしい。
目的地に着くと、荷物を下ろして階段に腰をかける。
鞄の中から家から持ってきたお弁当を取り出して、蓋を開ける。
｢お、美味そうだな｣
｢ども…｣
手を合わせ小さくいただきますと呟く。
彼も先程買ったパンの袋をあけて、モソモソと食べ始める。本来食べ盛りであるはずの高校生。本当にそれだけで足りるのかと、心配になってしまう。
しかし昔から、食が細くて甘党の彼だ。きっとそれだけでも十分なのだろう。というか、なんか昔から思っていたのだが、ちょっと固形物というか形のあるものを食べるの下手ではないだろうか。
｢ところで｣
｢ん、なんだ？｣
私は最初から気になっていた疑問をなげかける。
｢なんで私なんですか？｣
｢…ああ、その事か｣
少し思考をめぐらせた後、合点がいったようで伏せていた目を開く。
昔と変わらない灰色の瞳をこちらに向ける。
｢さっきケンカ別れした奴がいたと言っただろう。お前がそいつに似ているような気がしたんだ｣
｢ふーん…｣
なるほど。
でも、似ているんじゃない。その友人と私は同一人物なんだぞ。
なんて、まあ、言えるわけもなく。
｢なんでだろうな。だってそいつは―｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
