【d!】必要不可欠 (ページ6)

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【水】幸せの永久持続ページ6

人間と言うのは一度満たされたら戻れない生き物なのだと言う事を、最近になって知った。

幸せの味を知ってしまうと、今までの普通が不幸になってしまう。

身の丈に合わない高望みをする様になってしまう。だから不幸を普通だと思ってるぐらいが丁度良い。

「それぐらい、分かっとった筈なんやけどなぁ。」

目の前の彼女に語り掛けるも、彼女はぼろぼろと涙を溢すばかりだ。

俺はさっきも言った通り、不幸を普通だと思って生きていくのが良いと分かっていた。

自分は幸せになれない人間なのだからと。愛を知ってはいけない人間なのだからと。

それなのに、彼女は一瞬にして俺の意思を変えてしまった。

幸せ、と言うのは複数の条件が重なって初めて、手に入れられるモノだと思っていた。

しかし彼女と出会って気付いた。自分の幸せは、彼女が傍に居てくれさえすれば叶うのだと。

そんな簡単に手に入るのならば、幸せを求めても良いのでは無いか？

俺はそんな風に考えた。しかし、手に入れてからそれは間違いだった事に気付く。

彼女と付き合って、傍に居る様になったは良いが、それが永遠で無い事に気付いたのだ。

今更気付いても遅かった。俺はこの幸せが普通となっていたし、もう彼女を手放すなんて出来はしなかったのだ。

だからと言って、何時くるか分からない終わりに怯え続けるのは嫌だ。

…そこで考え付いたのだ、二人で一緒に死ねば良いんだと。

そしたらきっと、死後の世界で二人きりの時間を、永遠に過ごせると思うのだ。

「俺等はきっと、死んでも一緒に居れるやろうしな。お前もそう思うやろ？A。」

笑顔のままで問い掛けると、彼女は顔を青ざめさせて必死に訴えてきた。

『死後の世界なんてある訳無い。お願いだから目を覚ましてよ…！』

何度も聞いたその言葉に、内心呆れる。目を覚まして欲しいのは此方の方だ。

例え死後の世界が無かろうと、片方だけが死んでしまうよりは余程マシな筈だ。

それなのに未だにそんな下らない事を言う。俺の事を本気で愛してるなら、少しは俺の気持ちも分かって欲しい。

死後の世界でもし会えなかったら、とか不安なのも分かるけど、そればかりは逝ってみないと分からない。

逃げない様にと縄で縛った彼女の首に、大きめの包丁を当てる。泣き崩れる彼女を落ち着かせる為に、笑顔を作った。

「大丈夫やで。Aの後を追って、俺も直ぐに逝くからな。」

鮮血が、飛び散った。