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 赤い六つの目。
 何年も前、無限城で強い鬼が集まる会議が行われたとき、迷子になった私を助けてくれた人だと思い出した。

 朗らかに笑い続ける青年から距離を置きながら、迂回して、六つの目を伏せる人のもとへじわじわ近寄る。

「あの、ありがとうございます」

 何を、とは言わない。
 血を摂取することの意味なんて、みんなみんな知っているから。

「助けてくれたのに、驚いてしまってごめんなさい」

 六つの目が私を見た。壱と書かれた赤い瞳、この人がきっと、一番無惨さまに近い。ふとそう直感する。

「自覚を持て」

 ぴり、と肌を刺す威圧。

「お前はあのお方の、唯一だ」
 
 しかし同時に、私は彼から無惨さまへの大きな忠誠心を感じた。魂をも差し出すみたいな忠誠心、きっとそれが常識だった時代に、この人は生まれたのだ。

「ありがとうございます」

 私はこの人が無惨さまの最もそばに居ることを、少し嬉しく思った。そして同時に安堵した。

「お名前、聞いてもいいですか」

 赤い目が見開かれた。おそらく、自分に興味を持たられるなんて考えて無かったのだろう。

「……黒死牟だ」

 こくしぼう、私が反芻して、今度は私が名乗ろうとしたら、それは黒死牟さんに遮られた。

「不必要だ」

 驚きつつ、眉を垂らす。黒死牟さんはそのまま私から離れると、簾の向こうへ姿を消してしまった。
 沈んだ肩に、手が乗せられる。

「ねぇねぇ唯一ちゃん、俺の名前は知りたくないの?」

 私は音にならない悲鳴を上げると、再び呆れたような顔の猗窩座さんに近寄った。

「どうしてそんなに警戒するのかなぁ。さては猗窩座殿、俺のこと何か唯一ちゃんに伝えたね?」

 それは私が首を振って否定してみせた。青年はそっかぁ、と残念そうな表情こそ浮かべるものの、その本心は何ら気にしていないようにかんじた。
 というか、感情がすべて上滑りしているように感じた。感情が顔の表面というか青年の表面だけを薄っすらと覆っているみたいな、変な感じ。まるで絵に書いた餅みたいに、本物だと信じがたい。

「俺は童磨。唯一ちゃん、君の名前は?」

 童磨、どうま、私は根拠もなくそれがぴったりな名前だと思った。

「A、です」

 答えたら、童磨さんはいい名前だね! と場違いに笑った。その笑顔がまるで、弾ける寸前の泡のように私は見えたのだ。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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