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 ※貝あわせとは平安時代の遊びで、今でいう神経衰弱みたいなものです。
 
 *

 私と無惨さまがよくやるのは、貝あわせの西洋かるた版だ。絵札を全部ひっくり返して、二枚だけめくって、その絵柄が揃ったら貰う。違う絵柄だったら戻す。それを延々と繰り返し、絵札を覚えていくという遊びだ。
 それがまあ無惨さま、信じられないくらい強いのだ。
 一度めくった絵札を覚えるのはもちろん、引きがとかく強い強い。一回目、何十枚という絵札のなかからいきなり正解の二枚を引き当てたりするのだ。ほんと末恐ろしい。そして何より恐ろしいのは、私相手に一切手を抜かないところだろう。
 何度挑んでも絶対に勝てない。ちょっとくらい私に勝たせてくれても良いだろうに、そんなことは多分考えもしない無惨さまがたまらなく愛おしいと思う私は、もう末期なんだと自覚しつつある。
 私は無意識に、首元の噛み跡を指先でなぞった。



「……で、勝負とはまさかこれのことか?」
「そうですとも、貝合わせ西洋かるた版で勝負しましょう」

 鼻息荒い私の言葉に、猗窩座さんは肩透かしをくらったような顔になった。てっきり違う勝負だとでも思っていた、みたいな顔だ。口には出さないみたいだけれど。

「規則は分かりますか?」
「……おそらく」

 それじゃあひとまずやってみましょう!
 私が言うと、猗窩座さんは仕方がないな、とため息とともに、対面して並べた座布団に座り込むと、豪快にあぐらをかいた。


 ◇◇


 結果は私の圧勝だった。

「……お前、ほんとに人間か?」

 唖然とした顔の猗窩座さんに私はここぞとばかりに胸を張って口角を上げてみせる。日々の無惨さまとの訓練の賜物だ! どうだ、見たか! 無惨さまが帰ってきたら、自慢しなくては!
 私がうはうはとその時の様子を想像していたら、猗窩座さんが少し真剣な面持ちで私の腕を掴んだ。そして手首を握ったり、二の腕を揉んだりしてきたのだ。私は眉を寄せ、猗窩座さんをなかば睨みつけるように見た。

「お前、力が弱かったり、体力が少なかったりするだろ」

 存外真面目な声に、私は目をぱちくりさせる。比較対象が無惨さまなので正確には分からないけれど、たしかに体力は無いほうだ。それに重いものも全然持てない。
 それがどうしたというのだろう。

「お前の身体の血の巡りは、これまで見てきたどの人間とも違う、特殊なものだ」

 血の巡り? と私は再び、ぐっと眉を寄せた。

 *

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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