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 ※西洋かるたはトランプのことです。
 大正時代ではそう呼ばれていたそうです。
 
 *

 床に絵柄の書かれた札を伏せ、並べていく。
 札は西洋かるたというもので、かるたと違い四種類の記号と数字、英語が書かれている。西洋から輸入されたいわゆるカードゲームで、古くは禁止されていたみたいだけど、今では頑張れば手に入るくらいには出回っている。らしい。
 西洋かるたについて本で読み、その話を無惨さまにお話したら、次の日には無惨さまが手に入れてくれていたのだ。無惨さま、一体どうやって手に入れたのだろうか。お店に売ってるところなんて見たことないのに。

「……あ」

 私を探して部屋に入ってきた猗窩座さんは、西洋かるたを見るなり顔をしかめた。

「ご存知ですか、西洋かるた」
「ご存知も何も、それをあのお方に頼まれて急遽手に入れたのが俺だ」

 私は目を見開いた。まさかこれまでに西洋かるたを通じて猗窩座さんとつながりがあったなんて。

「見つけ出してくれて、ありがとうございました、猗窩座さん。おかげで私はとっても楽しい時間を送れました」

 猗窩座さんのおかげですね。

「……俺の、おかげ?」
「そうです、猗窩座さんのおかげです。あんまりにも嬉しかったので、夜眠らずに遊んでしまうこともあったんですよ」

 ふにゃ、と笑って顔を上げたら、驚いた顔の猗窩座さんと目が合う。猗窩座さんは驚いた顔のまま他人事みたいに数回目を瞬かせた。そして長いまつげをふせ、ほんの少しだけ頬を緩めながら、言った。

「そうなのか」

 その仕草は、言葉は、あまりにも優しい響きを孕んでいたから、私は、猗窩座さんという一人の鬼の深い深い内面に一瞬手が触れた感覚に陥った。



「……せいようかるたは一人で遊ぶものなのか?」

 猗窩座さんの言葉に、私は絵札を並べ直しながら首を横に振った。
 
「いいえ、複数人で遊ぶものですよ」
「……普段は誰とやるんだ?」
「無惨さまとですよ」

 は? と言葉を残して、猗窩座さんは目を見開き、硬直した。

「お前はあのお方と、遊ぶのか……?」
「えぇ、むしろ無惨さまとしか遊びません。無惨さまは西洋かるたもそうですし、囲碁や将棋までなんでもお強いのです!」

 私が意気揚々と語るも、猗窩座さんはあまり聞いていないようである。「あのお方は、唯一とならば『遊ぶ』のか……」と呟くと、少し頬を引き攣らせていた。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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