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「やっと見つけました、私の救い主」

 恍惚とした表情の彼女を、無惨さまは問答無用で殺そうとした。ゆらりと無惨さまの髪が不自然に揺れ、腕がに太い血管が走り、爪が鋭く伸びる。
 私は、とっさに振り上げられた無惨さまの腕を掴んでしまった。驚いた顔の無惨さまが私の方を見る。

「……なぜ私の動きを遮る?」
「……やっと見つけました、と彼女は言っています。いつ無惨さまの姿を見たのか、そしてなぜ探していたのか、気にならないのですか?」
「全く気にならんな」

 そう、ですか。
 私は呟きながら、ゆるゆると腕を離す。不思議な気持ちが胸の中にうまれながらも、無惨さまが彼女に爪を立てる瞬間を目を固く閉じて待った。
 が、それは一向にやってこなかった。



「目を開け、A」

 まつげをくすぐられ目を開く。そこはすでに無惨さまと私の暮らす屋敷で、私はほっと肩を撫で下ろした。ら、その瞬間、上ずった声が耳に飛び込んできた。

「救い主さまの神技をこの目で見られるだなんて……!」

 黒髪の彼女もまた、屋敷に居たのだ。私が驚いて無惨さまを見上げると、無惨さまは片眉を上げた。

「あの女の言葉が気になるのだろう? 満足するまで聞けば良い」

 私は瞳を揺らした。再び不思議な気持ちが胸に浮かんだ。私は無惨さまの言葉に音なく頷くと、胸に手を当て部屋中を見回す彼女の肩を叩いた。

「あの、お名前はなんですか?」

 彼女は一瞬、ひどく冷めた表情を浮かべる。が、すぐにまた恍惚の表情に戻って、品良くお辞儀をしてみせた。

「私はさよ子。あなたは?」
「Aです」
「そう、ところで……貴方様はなんというお名前なのですか?」

 彼女、もといさよ子は、少し離れたところで私達の様子を観察していた無惨さまに駆け寄った。そして膝を立て、さよ子は無惨さまにそんなふうにたずねた。
 無惨さまは梅干し色の目を細め、ぽつりと口にする。

「月彦だ」

 私は目を見開くけれど、さよ子は嬉しそうな声を上げ、無惨さまの膝に手を乗せた。

「とっても尊いお名前です!」
 
 もやもや、とそのさまを見ていた私の心に悪雲が立ち込める。
 煌めく笑顔のさよ子はふっと目を細めると、躊躇いもなく、言った。

「私、以前にも貴方様が人を殺した瞬間を見たことがあるんです!」

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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