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「仮にその青年が鬼を犯人だと思っているとしたら、そいつはまず間違いなく鬼殺隊だな」
「鬼殺隊……?」
「あぁ。それは後で話そう」

 無惨さまがぱちん、と一回指を弾いたら、まばたきする間に部屋のつくりが変わって、私と無惨さまは書斎の革張りの椅子の上にいた。
 無惨さまは私を膝の上に乗せたまま、机上の真っ白な紙にさらさらとペンを滑らせる。

「一つ二つ、Aが勘違いしていることがある」

 無惨さまが書いているのはどうやら白地図で、大まかな地図を書き終えると、仕上げに一点を赤く目立たせた。

「まず一つ、私は鬼のボスでは無いから、鬼が何をしようとも、私が捕まるということはない。そもそも捕まるという概念が存在しない。概ね、捕縛しようとする人間を殺すか殺される」

 言いながら、無惨さまはぽつぽつと紙に点を増やしていく。

「もう一つ、Aや数名の町人は犯人を鬼だと疑っているらしいが、それらは鬼がやったことではない」

 え、と私は顔を上げた。
 私は鬼の犯行だとばかり思っていたので、無惨さまの意見はあまりに新鮮だった。

「私はすべての鬼の行動を把握している。私の支配下にある。例外もあるが……それはまあ違うと言って良いだろう」

 印象的だったこと。
 それは、語る無惨さまの目がかつてないほど冷たいものだったこと。

「この周辺の地図だ。Aがよく行く街はこの赤い場所だ。そしてこの黒い場所に鬼がいる」

 言って、指さすそこには先程無惨さまが書いた地図が。私はしばし言葉を失ってその地図を見ていた。赤い丸を避けるように黒い点が集まっているからではない。無惨さまが抱えたはかり知れない暗いものに、ほんの少しでも触れてしまったからだ。

「街から近い位置に鬼はいない。故にあり得る可能性は、人間の独自の犯行のみだ」

 無惨さまの言うとおり、赤い点の周りに黒い点は無い。むしろ、避けるように赤い点を中心に円を描いているようにさえ見える。

「A、しばらくは買い出しには行かなくていい」

 もう一度指をパチンと弾いたら、今度は私の部屋にいた。無惨さまはクローゼットの扉を開けて、まだ私が着ていない大量の服の一着を掴むと、私に投げる。

「これを着て良い子にしているんだ。いいな?」
「……考えておきます」

 恒例の私の返事に無惨さまは軽く笑うと、部屋から出ていった。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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