第四十一話 ページ42
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「この女、静かにしてたと思ったらバカにしや＿＿」
どしゃっ、と水っぽい音がして、『バカにしやがって』という親分の言葉は不自然に途切れた。私の足に生暖かい液体がかかって小さく悲鳴を上げたけれど、子分の絶叫に紛れてよく聞こえなかった。つん、と鼻を刺す血の匂い。親分、と叫ぶ子分の声。
「お前、親分に何をした？！」
胸ぐらを掴まれる。何もしていない、私は何も。身をよじりながら首を横に振るが、子分は掴んだ胸ぐらを離さない。私の頬に垂れた一滴は涙だろうか、血だろうか。空を切る音、拳が振り上げられたのだ。私は迫りくる衝撃に身を硬くし、ぐっと歯を食いしばった。はらりと耳元をかすめる花びらの気配、子分が息を呑む音を聞く。
「……きれ、な花」
呟いたのを最後に、再び子分の声を聞くことは無かった。代わりに再びぐしゃっと水っぽい音が聞こえて、今度はもっと近くで生暖かい液体を浴びた。瞬間、静寂に包まれる。
「…………え」
疑問と不安に満ちる。子分と親分は、どうなった？ しかし私は薄っすらと分かっていた。もしもトムラさんの個性を人に使ったらどうなるのか。しょっちゅう服にこびりついたトムラさんのものではない血はどうやってついたのか。
＿＿彼は、人を殺める行為を、躊躇わない人なのではないか。
薄っすらと分かっていたのだ。心の何処かで、肯定もしていたのだ。
視界が開ける。目隠しが外されて、目の前にトムラさんが居るのを確認すると、私はとうとう涙が溢れてしまった。身体が芯から震えた。
「……A」
怖かった、自分自身が。血に濡れていてもトムラさんだと受け入れてしまっている自分が。私のために消えた二つの命、それを浴びて平然としているトムラさん。
ふわり、瞬きの間に花が開き、散る。咲いたのは黒色の花びらだ。恐怖、黒く濡れた恐怖。トムラさんはそれを見ると、なぜだかひどく傷ついた顔をした。私へと手を伸ばし、寸前で手が血で濡れていることに気が付き、躊躇うように手を握った。
「……A」
震える私は返事が出来なかった。どうしてトムラさんはあんなにも悲しそうなんだろう。私は少ない唾を飲んで、続く言葉を待った。
「＿＿A、お前はクビだ」
そうして言われた言葉は、私が最も恐れていたものだった。
「もう二度と俺達に関わるな。いいな？」
良くない、と口にしたかったが、ついに疲労の限界をむかえた身体は意識を断ち切ってしまった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
