第四話 ページ5
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「白は恐怖じゃなくて、言葉にすると『好き』って感情ですね」
と、なぜか彼の表情が固まった。彼は白い花びらと私の顔を行ったり来たりして、何度か瞬きをした。私は一の字に結ばれた口を見て、首を傾けた。なんで変な空気なんだろう。もしかして、間違いの訂正の仕方がいけなかったかな。
「随分と……」
口を開いた彼はするりと横に目をそらした。
「呑気な個性、だな」
彼がかすかに、困ったような不器用な笑顔を見せるので、私は目を見開いてしまった。なんて素敵な笑顔なんだろう、と。最初は怖い人って思ったけれど、間違いなくきっと、この人は素敵な人だ。私は不思議な確信を胸に、頬を緩めた。
「えへへ、ヒーローとかの皆さんの個性と比べるとなんの役にも立たないけど、結構気に入ってるんです」
また頭の上で花が開いた気配がしたと思ったら、彼が私の肩に手を伸ばして、落ちてしまった花びらを拾った。太陽みたいなにじむ黄色、彼はそれを電気に透かすように持ち上げると「喜び」と呟いた。
「黄色は喜びか？」
「ご名答です、凄い！」
本当に凄い、小さく手を叩くと、また頭の上でぽんぽん花が咲いた。視界の端を黄色の花びらがひらひら落ちる。
「あっ、これからお掃除しなくちゃいけないのに！」
私が慌てるのに合わせて花びらが数枚落ちる、ひらひらひらひら、踊るみたいに私のまわりを落ちる。彼はしばらく黙っていたけれど、私がエプロンに花びらを集めきったところで口を開いた。
「先に何か食べるものをよこせ」
「はい、すぐにお作りしますね。ソファで待っていてください！」
そう言う私の言葉に従って彼はソファに座って、またトランプを積み始めた。私がたまごサンドを作り運んだ頃にはそれはもうすっかりもと通り、私が来たときの状態になっていたので、細心の注意を払ってテーブルにたまごサンドを置いた。
「おい」
洗濯物を畳む背中に声をかけられ振り向くと、たまごサンドを片手に壁にもたれ、私を見る彼がいた。
「お前、名前は？」
「あっ、名乗るのが遅くなってしまってごめんなさい。花房Aといいます」
「ふぅん」
彼はそれからたまごサンドを一口食べると、何かをもごもご呟いた。
「ん？ 何ですか？」
「トムラ、俺の名前。弔うって字でトムラ」
彼はそれだけ言うとたまごサンドの最後のひと口を口に放り部屋を出ていってしまった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
