第三十四話 ページ35
*
荼毘さんとぴったりくっついて歩く。
一つの傘を使っているからだろうけど、にしても密着しすぎである。普段ならば照れてしまうかもしれないけれど、今は状況が状況だから、そんなこと言っていられない。
正直、何が起こっているか検討もつかない。
とりあえず荼毘さんの言うことに従い帰路についているけれど、なぜ荼毘さんがぴったりくっついているのか、なぜ荼毘さんは窓の外を睨みつけていたのか、何を警戒しているのか、疑問は尽きない。
が、それを口に出すこともできず、ただ私と荼毘さんは無言で歩き続けた。
靴に雨水が染み込み、ぐしょぐしょと嫌な音を立てる。アスファルトにできた水たまりをよけようと傘から飛び出してジャンプをしたとき、突然地面ががばりと口を開くように、水たまりがその面積を広げた。
「……っA！」
焦るような荼毘さんの声。えっ、と声を漏らしながらも私の足は先程まで地面だったはずの水たまりのなかに着地して、ぬるりとぬかるんだ泥がまとわりつくような感触を覚える。そのまま自重で深く深くへ足が沈み、焦って足を抜こうとするも、そのせいで余計に沈んでしまう。
水たまりが急に大きくなったこともおかしいけれど、それだけではない。周囲はアスファルト、つまり水たまりの水の向こう側もアスファルトであるはずである。しかし私の足は＿＿もう腰のあたりまで埋まってしまった私の足は、明らかにアスファルトではないものに捕らわれている。
「荼毘さん！」
なんとか上半身をひねり、先程まで荼毘さんがいた背後を見る。けれども彼の姿は見当たらない。
「荼毘さん、荼毘さん？！」
と、上空から衝撃音がして、私から少し離れた位置に建物の破片らしきものがばらばらと崩れ落ちた。
動かなければ沈まないことが分かったので、なるべく動かないよう気をつけながら音の源を見上げる。
そこには二人の人物＿＿おそらく片方は荼毘さん＿＿がおり、激しく衝突していた。個性を使っているのだろう、まるでテレビの向こう側のように、爆風や建物の破片が届き、鼓膜を揺すぶる音が響き渡る。私の足の周囲の泥も共鳴するようにびりびりと震えていた。いや、これは私の身体が震えていたのかもしれない。分からないけれど、私は悲鳴を出すことも忘れ、ただ目を見開いていた。
A、と。
頑なに呼ばなかった私の名前を呼ぶ荼毘さんの声が、地面に衝突する破片の向こうから聞こえてくるような気がした。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
