第四十三話 ページ44
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予想通りその家政婦のアルバイトは電話をしただけで即採用された。ほんの少し、ほんの少しだけ、指定された建物の扉の向こうに、トムラさんと黒霧さんが居るんじゃないかと期待したけれど、現実は違う。
「死穢八斎會の治崎廻だ」
私を取り囲む彼らはいわゆるヤのつくお仕事の人たちで、その上若頭は潔癖症。もう何でも来いという気分だった。運良く私は家事が得意だし、つい最近まで極道に負けないくらいヤバイ組織にふれていたのだから。髪に巻いた白いリボンはその証。私が私である、確かな証。
「……ここ、埃が残ってるぞ」
ばっと振り向くと、鬼上司、もとい若頭その人が窓のサッシに残った埃を丁寧に指の上に乗せていた。ペストマスクの上に鎮座する瞳がすっと細められる。隙なくやろうと思ったのに、まだ埃が残っていたのか！
「くぅ……今すぐ拭きます！」
ごしごし雑巾で窓のサッシを拭く。ムキになって必死に拭く私を、若頭は上司のゆとりたっぷりで見ていた。今に見てなさい、今すぐにその冷めた目を驚きで見開かせてやる！
◇
「……どうでしょう」
隅から隅まで、余すことなくきちんと掃除をした。これまで若頭に注意されたところは特に念入りに。
若頭は掃除が終わった部屋を歩き回り、指で触りながら、私がしたように隅から隅まで余すことなく確認していた。私はごくりと唾を飲む。若頭は最後に定位置のソファに深く腰掛けると、頑なに外さなかったペストマスクを外した。
「……合格だ」
遅れて脳に届く言葉、私は瞬間、全身に喜びを乗せた熱い血が巡るように感じ、感情のままに叫んだ。
「やったっ！ ついに一発合格だ！」
「……うるせぇ」
わあわあ騒いでその場でくるくる回る。何やら黄色いものが降ってきたなと思ったら、どうやらそれは私の頭から咲いた黄色い花らしかった。黄色いのが咲いたのは久しぶりだった。
さて、怒られる前に花びらを回収しなくては、と屈んたとき、視界に影がかかった。
影は若頭によるものだった。
「……お前の個性か？」
はい、そうです！ と答えながら若頭の顔を見ると、彼は目を見開いて、黄色い花びらを見つめていた。私は目を瞬く。
いや、確かに目を見開かせてやるとは思ったけど、こんなことでだとは全然考えてなかった。
「……役に立たなそうな個性だな」
「えへへ。でも私は結構気に入ってるんです」
へらへら笑いながらそう言うと、若頭はじっと私を見て、やがてそらした。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
