第二十九話 ページ30
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唐突にトムラさんがりんご飴を食べたいと言い出して、私はしばし人のいない木陰で休むことにした。さっきトムラさんに買ってもらったかき氷を頬張ると、きぃんと金属を叩いたみたいな痛みが頭に刺さる。どうして冷たいものを食べるとこんなにも頭がきんきんするんだろう。なんてのんきなことを考えていたら、何やらこちらに近寄る足音がして、かき氷から視線を上げたら、男の人が私を覗き込んでいた。
「可愛いじゃん……おねぇちゃん一人？」
いかにも、な人と言ったら失礼だろうか。黒っぽい甚平を着てお酒を片手にふらふらと歩いていて、いかにもな酔っ払い。薄ら赤らむ鼻の頭を指先で掻きながら、私との距離を不適切なほど詰めてくる。
「……違います」
「じゃあカレシと一緒に来てんの？」
「それも……違います」
言って後悔した。きっと嘘をついて彼氏と一緒です、と言えばすぐに彼も諦めただろうに。彼氏と一緒ではない、と知った途端の表情の緩みは露骨で、私は胸の奥がもやもやとした。
「あっちに良い場所知ってるよ、俺。穴場スポット、一緒に行かない？」
「行きません、大丈夫です」
私の強張った声にも構わず、男の人は私の手首を掴んできた。呼気からはお酒の匂いがぷんぷんしていて、彼がどれだけ酔っているかをありありと証明していた。私がその場で突っ張ると、不機嫌そうに顔を歪め、手首の力を強める。
「良いだろ、ちょっとくらい。楽しませてやるよ」
「結構です、離してください！」
ぐしゃ、と私の手からかき氷が滑り落ちる。あぁ、トムラさんが、トムラさんが買ってくれたかき氷なのに。思わず目をつぶる。しかしお腹の奥でめらめらと怒りは製造され続けて、遂にはぷっつん、と何かが切れた。
「っいい加減に＿＿」
声を張り上げ、目を開けた瞬間、手首の拘束が消えた。そして顔にお面が被せられ、今度は背後から腕がまわり、ぎゅっと優しく抱きしめられた。ふわり、私が普段バーで使っている洗剤の匂い。
お面で視界が限られてしまったがために、その他の感覚が敏感になる。首元に、熱い息がかかった。
「……ト、ムラさん？」
返事はない。しかしそのまま横抱きにされると、私を抱く人物は夏祭りの騒音から離れていく。
ようやく降ろされたとき、そこは周囲を木で遮られたあまり光の届かない空間で、わかってはいたけれど、目の前にはトムラさんがいた。
「……A」
トムラさんは静かにそう、しかし感情を滲ませ呟いた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
