第十一話 ページ12
*
「……なんか食べようぜ、A」
さあ帰ろうと外に出たら、トムラさんがそう言って私の手首を握りしめて、ぐいぐいとショッピングモールの方へ誘導し始めた。
「えっ、で、でも黒霧さんに」
トムラさんはモゴモゴ言う私を無視してショッピングモールに引っ張る。自動ドアをくぐると、身体全体をひんやりとした空気に包まれ、少し遅れて騒がしい音の粒が耳に飛び込んできた。
「……うわぁ」
ため息みたいに感嘆すると、トムラさんは何故か嬉しそうに私の頭をくしゃっと撫でた。
何か食べようって言ってショッピングモールに入ったのに、トムラさんは近くの服屋さんに私を引っ張ると、手当たり次第私の身体に服を当てて、照れる私を見て笑った。恐れ多い可愛い服を容赦なくあてがうトムラさんは満足そうで、私の方ばかりがヘロヘロになってしまう。
「……あ」
それはふと、クマの人形がズラリと並ぶお店の前を通ったときだった。ショーウィンドウの向こう側、目つきの悪い青いクマが私の目に飛び込んできた。
「可愛い……」
無意識にそう呟いたら、トムラさんは鋭くそれを聞き足を止めた。私を真似てショーウィンドウを見て、薄く笑う。
「へぇ、こんな少女趣味なもんが好きなのかよ」
「少女趣味って……。女の人ならこういった可愛いものはみんな好きですよ、きっと」
「そんなもんか？」
トムラさんはそう言いながらお店の中に入ると、陳列されたくまの人形を見ていった。しかしけろりと顔色を変えることなく、首を捻った。
「全部おんなじに見える」
私は目を瞬かせた。しかしそれを見られないよう、青いクマの人形を探した。トムラさんと私は、見えている景色が違う。それはきっと、悪いことでは無いけれど。
「あ」
青いクマを見つけた、目が赤くて、どこか不健康そうなクマ。可愛いクマなのに、変なの。
「買ってやるよ」
クマをにまにま見つめる私の背後から手を伸ばすと、クマを一体手にとって、レジに持って行った。私は驚きで声を上げることもできず、気がつけばレジを通し、小脇にクマを抱えたトムラさんにニヤニヤ見下されていた。
「お前趣味悪いな？ ぜんぜん可愛くねぇクマじゃん」
そう言ってクマをかかげるトムラさん、そこでようやく気がついた。
私が気になった青いクマ、不健康そうなその顔が、トムラさんにそっくりだったのだ。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
