番外編 遊郭�� ページ43
*
「本当にごめんなさい……」
寝台の上で土下座を披露する。無惨さまは隣に椅子を寄せ、足を組んで私を瞬きすることなく見続けている。
もれなく私の手足には無惨さまから伸びた触手ののような何かが巻き付いていて、少しでも動こうものならみちみちとさらに拘束がきつくなる。
無限城にて無惨さまとばったり鉢合わせしてしまった後、無惨さまの触手のような何かに絡め取られたなと思ったら、そのまま無惨さまの部屋の寝台に縛り付けられてしまった。無惨さまは終始無言で、私はそこでようやくやりすぎたということを察した。無惨さまは、これまで見たことがないくらい、怒っていた。
そう、ものすんごく怒っていた！
「……なぜ、このようなことをした」
怒りからか少し声が震えてる。私はちら、と視線を上げた。
部屋はなぜか天井までぼろぼろで、無惨さまの髪や頬には乾いた血が飛び散ってる。なぜぼろぼろ、なぜ血だらけ、とは色々と怖くて聞けない。
「本で読んだエイプリルフールが今日だったので、無惨さまを引っ掛けようと思って嘘を付きました……」
無惨さまは何も言わない。あぁ本当に無惨さまは怒っているんだと思い、どんどんと気持ちが沈んでいった。
「……A」
無惨さまの手に顎がとられる。赤い瞳と視線が交わる。
「Aには呆れた。お前を側に置こうという気持ちはもう微塵もない。大切でも何でもない。私の視界から居なくなれ」
私は目を見開いた。指先まで冷たいものが一気に広がるように感じた。え、と私の口から乾いた声がこぼれた。少し遅れて、悲しい悲しい気持ちが全身に広がった。
「……っ」
私が力なく視線を下げたら、無惨さまからわずかに笑う気配がした。
「エイプリルフールだ」
え。
私は弾かれたように顔をあげる。
無惨さまは愉快そうに口の端を釣り上げ、目を細めていた。
「これで少しは私の気持ちが分かったか？ これに懲りたら、こんなことは二度と計画しないことだな」
無惨さまぁ、と私の喉から情けない声が漏れた。
なんだか涙が滲んできた。無惨さまはいささか気分が良さそうに私の拘束をゆるめると、べろ、と赤い舌を出して、私の涙を舐め取った。
「泣くほど嘘が堪えたのだな」
その日の夜、私は無惨さまの触手らしき何かに巻き付かれながら眠った。そんな夜がしばらく続くもんだから、もう二度とこんなことはしない、と私は胸にかたく誓うのだった。
fin
終わり
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久遠(プロフ) - 本当に凄く素敵なお話でした。転生した先で2人が幸せであることを願います。転生した先でのお話も読みたいなぁという気持ちもあります。きりんの木さんの小説をまた読みたいのでpixivのアカウントをいつか絶対見つけたいです。教えてくださるのが1番助かりますがね笑 (6月28日 21時) (
レス) id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - 素敵な話でした。どの目線から言うのかという感じですが、文章の書き方も素晴らしいかったです。無惨様への罰という形で終わりましたが、無惨様へ幸せを送る形で、新しい二人の話を読みたかったなと言う気持ちではあります。 (5月29日 23時) (レス) @page43 id: d9f5409103 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - ドキドキが止まらない素晴らしい作品でした！！！無惨様の好感度爆上がりです！ (2021年12月14日 8時) (レス) @page43 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 約1年ぶりにお気に入りを探りこの小説を読み返しました。完結お疲れ様です。寂しいですが、2人らしい最期でした。悪役である無惨さまへの贈り物、素敵だと思います。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年9月27日 3時) (レス) @page37 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
なあ - 素晴らしい作品でした。作品の中の無惨が生きているような感覚でした (2021年9月25日 2時) (レス) @page37 id: a69664b85d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2020年1月25日 12時
