番外編 遊郭�� ページ42
*
『無惨さまへ
遊郭で働くことにしました
今までありがとうございました A』
私はそう一筆したためると、それをよく見える机の上に置いた。そして無惨さまが上弦の鬼の皆さんを集めている無限城へ、いそいそと移動する。
なにも私は、本当に遊郭で働くわけではない。
きっかけは一冊の本に書かれていた、異国の文化だ。その名もエイプリルフール。とある特定の一日だけは、嘘をついても許される、というとっても魅力的な文化だ。偶然にも今日はそのエイプリルフール。これを試さないわけにはいかない！
ということで私は、無惨さまが上弦の鬼の皆さんとお話をしている最中に嘘の置き手紙を残し、無限城のどこかへ隠れる、という計画を立てたのだった。
無限城を、音を立てないように走り回り、適当な部屋の収納の中に隠れる。ふふふと私の口から悪い笑みがこぼれた。
無惨さま、びっくりしてくれるだろうか？
私は無惨さまの驚いた顔を頭の中に浮かべながら、次第にまぶたが重たくなっていくように感じた。昨日の夜ふかしを少し恨みながら、私はとうとう目を閉じた。
◇
鬼舞辻無惨は居住空間に戻ってきた際、違和感に眉を寄せた。違和感、音がしない、人間の気配が無い。そして机の上に置かれた一枚の紙に気がつく。
『無惨さまへ
遊郭で働くことにしました
今までありがとうございました A』
無惨は紙から顔を上げた。部屋中を見回す、いない。すべての部屋を見回す、いない。
Aの部屋を見回す、いない。
「A」
返事は、ない。
ぴし、と無惨の額に青筋が浮かんだ。隠していた八重歯が鋭く伸び、目がぎらぎらと光を帯びる。
「Aっ……！」
震える声でそう口にした瞬間、戸棚の硝子が割れ、部屋中が大きく揺れ、床や壁に何かに薙ぎ払われたような大きな傷がついた。部屋は見るに耐えない大惨事となる。無惨はその中をわずかに震えながら歩くと、その足で吉原遊郭へと向かった。
Aを、見つけ出すために。
一方その頃、Aは暗闇の中ふと目を覚ました。しばしぼんやりとするけれど、やがて自分がエイプリルフールのために隠れているのだということを思い出した。
Aはそろそろかと収納から抜け出すと、隠れていた部屋の襖を開いた。
瞬間。
血だらけの無惨とばちり、目が合った。
「あ」
瞬きの間に、Aの全身が触手のような何かに絡め取られた。
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久遠(プロフ) - 本当に凄く素敵なお話でした。転生した先で2人が幸せであることを願います。転生した先でのお話も読みたいなぁという気持ちもあります。きりんの木さんの小説をまた読みたいのでpixivのアカウントをいつか絶対見つけたいです。教えてくださるのが1番助かりますがね笑 (6月28日 21時) (
レス) id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - 素敵な話でした。どの目線から言うのかという感じですが、文章の書き方も素晴らしいかったです。無惨様への罰という形で終わりましたが、無惨様へ幸せを送る形で、新しい二人の話を読みたかったなと言う気持ちではあります。 (5月29日 23時) (レス) @page43 id: d9f5409103 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - ドキドキが止まらない素晴らしい作品でした！！！無惨様の好感度爆上がりです！ (2021年12月14日 8時) (レス) @page43 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 約1年ぶりにお気に入りを探りこの小説を読み返しました。完結お疲れ様です。寂しいですが、2人らしい最期でした。悪役である無惨さまへの贈り物、素敵だと思います。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年9月27日 3時) (レス) @page37 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
なあ - 素晴らしい作品でした。作品の中の無惨が生きているような感覚でした (2021年9月25日 2時) (レス) @page37 id: a69664b85d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2020年1月25日 12時
