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*
「…………」
「た、たくさん食べるのよ！ 大きく育つにはまず食べることからって、よく言うもの！」
「…………」
「あ、その天ぷら美味しそう……じゃなくて、貴女が食べないと意味ないものね！」
「…………」
「あぁ、炊きたてのご飯のいい香り……」
「……あの、良かったら一緒に食べますか？」
甘露寺蜜璃さんは私の言葉に、ぱっと頬を染めると、満面の笑みになった。
「良いのぉ！」
良いよ、どころではない。むしろ願ったり叶ったりだ。と言うのも、お館さまは宣言通り私に健康な身体を与えるため、まる一日分の食事を昼食で出してきたのだ。貧乏性の抜けない私としては、食べ物が残ってしまうのはたまらなく嫌だ。だからぜひとも完食に協力して欲しかったのだ。
そんなことを考えている間に、甘露寺さんは台所へと走り箸と器を掴むと、私の隣へ着席した。
「さっきからずっと私も食べたいなって思ってたの！ いただきまぁす！」
顔どころか声に出てましたよ、とはさすがに言えなかった。今日の警護の担当、名前を甘露寺蜜璃さん。からからと明るい顔で一緒にご飯を食べるこの甘露寺さんも、刀を振るい鬼を絶やす鬼殺隊の優秀な柱であるらしい。
「……ふう、美味しかったわぁ」
ほっぺたにご飯粒をつけて幸せそうに笑う。甘露寺さんはその身体のどこにおさまるのか、あっという間に食べ尽くしてしまった。あっぱれな食べ方だった。
なんだかとっても可愛い人だなぁと思っていたら、急に真剣になった顔の甘露寺さんにずいっと顔を寄せられた。
「Aちゃん、私は今から貴女にとっても大切な質問をするわ」
声の調子が抑えられており、私はごくりと唾を飲んだ。大切な質問、それってもしかして、もしかしなくとも、無惨さまのことではないだろうかーー
「ーーAちゃんは、好きな人はいる？」
ーー違った。いや、違わなくもないけれど、思ってたのと違った。
私は無意識に入れていた肩の力を抜くと、ちょっと考えた末、素直に「居ます」と答えた。
「そ、それはどんな人なの？！」
甘露寺さんは頬を赤く染め、私にずいずいと顔を寄せてきた。ふいに桜みたいな甘い匂いが鼻をつつく。
どんな人、と私は目をつぶる。
「頭が良くて、冷静で、自分に自信がある人です。冷たいように思われがちですが、実はとても優しい。見せびらかさない、優しさを持つ人です」
目を閉じればすぐに浮かぶ、あの愛おしい梅干しみたいな赤い瞳。
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久遠(プロフ) - 本当に凄く素敵なお話でした。転生した先で2人が幸せであることを願います。転生した先でのお話も読みたいなぁという気持ちもあります。きりんの木さんの小説をまた読みたいのでpixivのアカウントをいつか絶対見つけたいです。教えてくださるのが1番助かりますがね笑 (6月28日 21時) (
レス) id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - 素敵な話でした。どの目線から言うのかという感じですが、文章の書き方も素晴らしいかったです。無惨様への罰という形で終わりましたが、無惨様へ幸せを送る形で、新しい二人の話を読みたかったなと言う気持ちではあります。 (5月29日 23時) (レス) @page43 id: d9f5409103 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - ドキドキが止まらない素晴らしい作品でした！！！無惨様の好感度爆上がりです！ (2021年12月14日 8時) (レス) @page43 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 約1年ぶりにお気に入りを探りこの小説を読み返しました。完結お疲れ様です。寂しいですが、2人らしい最期でした。悪役である無惨さまへの贈り物、素敵だと思います。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年9月27日 3時) (レス) @page37 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
なあ - 素晴らしい作品でした。作品の中の無惨が生きているような感覚でした (2021年9月25日 2時) (レス) @page37 id: a69664b85d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2020年1月25日 12時
