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無惨さまから、一度だけ話を聞いたことがあった。
鬼殺隊。鬼を殺すための集団、異常者の集まり。
無惨さまはそれ以上何も語らなかったけれど、それだけで無惨さまと鬼殺隊の間の深い深い確執を感じ取った。
お館さまが語る話は、極めて分かりやすかった。
いわく、追い詰めた鬼の一人が、私の存在をほのめかし死んでいったらしい。それから他の鬼へ聞いてみれば、どうやら本当に人間が、しかも少女が鬼舞辻無惨と生活している。
お館様は歓喜した。
この少女を捕らえれば、あの憎き始祖の鬼に迫る事ができる。その背を掴むことができる、と。
それからお館様は慎重に私について探り、ようやく日の出ている間、なおかつ一人で出歩く私を見つけたらしい。
話を聞きながら私は、1つの違和感に辿り着いた。意識を失う寸前、胡蝶しのぶさんは私を『保護する』と言っていなかっただろうか。
ーー鬼殺隊の人たちは、鬼舞辻無惨という鬼を心の底から憎んでいる。そして無惨さまと暮らす私が未だ人間であると知っている。
もしかして彼らは、『私が望んで無惨さまと一緒に居る』ことを知らないのではないのだろうか。無理やり捉えられている、なんて考えているのではないだろうか。
そうだとすれば、胡蝶しのぶさんの『保護』という表現にも納得がいく。
ならば。
「……話すことは、出来ません。私が話すことで皆さんにどんな危害が加わるか分からない。それに、皆さんが本当に安心できる方々か分からない」
私は警戒心剥き出しの『態度』でお館様を睨むように見た。
ならば、私は彼らを欺かなければならない。
欺いて、無惨さまの情報を話すことなく、そして無惨さまが私がここに居ることに気がつくより早く、ここから逃げ出さなければならない。
私は心の中でそう決意をし、重い息を吐いた。
「そうか、残念だ。……でもきっと、時間が解決してくれる」
お館様は残念だと言いながら、大して残念ではなさそうだった。伏せた視線がゆっくりと持ち上がる。ばちり、と深い色の瞳と視線が交わった。
「A」
ぐらりと、錯覚する。
まるで無惨さまに呼ばれたように。
「きっと君は話をしてくれる。私はそう、信じているよ」
言葉がゆらゆらと私に染み込み、ふいに全てを話してしまいたくなる衝動に駆られる。私はぐっと手を握りしめ、痛みで我を取り戻す。
お館様というこの人間は、私が思うよりずっと、手強い相手なのかもしれない。
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久遠(プロフ) - 本当に凄く素敵なお話でした。転生した先で2人が幸せであることを願います。転生した先でのお話も読みたいなぁという気持ちもあります。きりんの木さんの小説をまた読みたいのでpixivのアカウントをいつか絶対見つけたいです。教えてくださるのが1番助かりますがね笑 (6月28日 21時) (
レス) id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みずき(プロフ) - 素敵な話でした。どの目線から言うのかという感じですが、文章の書き方も素晴らしいかったです。無惨様への罰という形で終わりましたが、無惨様へ幸せを送る形で、新しい二人の話を読みたかったなと言う気持ちではあります。 (5月29日 23時) (レス) @page43 id: d9f5409103 (このIDを非表示/違反報告)
chiaki0708(プロフ) - ドキドキが止まらない素晴らしい作品でした！！！無惨様の好感度爆上がりです！ (2021年12月14日 8時) (レス) @page43 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 約1年ぶりにお気に入りを探りこの小説を読み返しました。完結お疲れ様です。寂しいですが、2人らしい最期でした。悪役である無惨さまへの贈り物、素敵だと思います。素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年9月27日 3時) (レス) @page37 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
なあ - 素晴らしい作品でした。作品の中の無惨が生きているような感覚でした (2021年9月25日 2時) (レス) @page37 id: a69664b85d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2020年1月25日 12時
