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そうだよ。
今までの努力は、お互いが勝つためにやってきたこと。
それを踏みにじるっていうの…?
直人 「みなさーん、静かにー!」
ベルをチリンチリンと鳴らし、
ざわめく会場を一気に沈めるところが直人先生。
そのまま、舞台に立つ2人の方に向き直る。
直人 「…で?なんだっけ?」
伶菜 「私と杏香、どっちがうまかったか決めてください」
直人 「そんなの決めないよ?」
杏香 「どうして?だって、そのために私達……」
直人 「うん、君たちは一生懸命頑張ったんでしょ?
お互いが目標を持って歌ってきたわけだ。
けど、勝つこと自体に意味は無いよね?」
伶菜 「意味は無いって…。
それ、あまりにも酷くないですか?
じゃあ、私たちは今まで何のために……!」
直人 「自分たちが、納得できるまで歌と向き合ってきたんじゃないの?」
杏香 「……それは、」
直人 「目の前にある壁と向き合い、嫌いなものを受け入れて、飲み込んで、歌ってきたんでしょ?
なのに今日聞いた歌からは、曲の良さが見えなかった。
何かが欠けてたよ。感動したけど、足りない何かが。」
そこまで言って、
直人先生がグラスのワインを飲み干す。
直人 「歌に気持ちは込めたか?」
伶菜 「気持ち……?」
直人 「伶菜ちゃんさー、将来ヴォーカリストになりたいんでしょ?
なのに、今日まで勝つことにしか目を向けてなかったよね?
肝心の歌には何の感情もこもってなかったし、歌の意味すら見い出せてなかったんじゃない?」
伶菜 「歌の、意味……」
直人 「それに対して、杏香ちゃんの言葉には魂がこもってた。
発するひとつひとつの音色に、悲しみが混じってたよ。
それだけ、目の前の歌に立ち向かっていった。
恐れを成して、涼太と一緒に向き合ったんだ。
伶菜ちゃんは、それを隆二と一緒にしたか?」
伶菜 「……それはっ、」
直人 「1分1秒を惜しんで、息をするのも忘れるくらい歌に没頭したか?
意味を考えたか?隆二の考えは?自分の声を一方的に押し付けてただけなんじゃないの?」
伶菜 「……っ!」
それは言い過ぎなんじゃないの?ってくらい、
伶菜ちゃんの心をズタボロにしていく直人先生の言葉。
その現場を見ていた私たちは 返す言葉もなくて。
ただただ、沈黙だけが漂う。
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菜の花(プロフ) - このお話に出会ってから5年も経っていました!読みたくなることが何度もあり、その度に最初から読んでます!とても面白くて大好きです♪キュンとしたり笑える所が多くて楽しませて貰ってます(笑)また更新されることを楽しみに待ってます´ω`*もの凄く続きが気になります!! (2021年11月7日 1時) (レス) id: 39b7d855c1 (このIDを非表示/違反報告)
りんな(プロフ) - このお話とても面白くて大好きです!!更新待ってます!! (2020年4月18日 1時) (レス) id: 10effccb1c (このIDを非表示/違反報告)
亜嵐LOVE - 続きを待ってるので更新してほしいです (2020年3月17日 18時) (レス) id: 1d6fa76e88 (このIDを非表示/違反報告)
亜嵐LOVE - 更新楽しみにしてます (2020年3月17日 17時) (レス) id: 1d6fa76e88 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - れお君のツンデレっぷりに1人ドキドキしてますっ!!片寄もかわいいですねぇー♪主人公、誰とおどろんだろう...?私の1番のお気に入りです! 更新、待ってます!! (2019年7月29日 23時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2015年11月24日 0時