第八話 ページ8
「Aさん。もし、まだ衆合地獄に行っていないのなら、アタシと一緒にまわりましょう?」
「え!良いんですか。お願いします」
「確かに。この場で働く本人から話を聞く方がタメになりますね」
鬼灯もお香の発言に賛同した。そのとき、一人の男性獄卒の泣き声が三人の耳に入る。
衆合地獄で勤める女性獄卒に想いを伝えるも、散ったようだった。
「A様。まさにああいった方がいるので、衆合地獄で働く男性は、筋金入りの硬派か軟派すぎる者しか就けないんです」
そんな光景を目の前に、鬼灯が冷静に解説をする。Aは頷くと、両膝をついて項垂れるその男性獄卒に近づいた。
「辛いでしょう?」
Aがそう声を掛けると、男性獄卒は顔を上げる。
「だ、誰ですか?」
「真言密教の教主である仏の元で…是非。恋の病などちょちょいのちょいです」
「勝手にあなたの所へ勧誘しないでください!」
鬼灯がつっこみ、Aの手を引く。男性獄卒はぽかんとしていた。
「でもそういうもんですよねぇ…!?」
引き剥がされたAが鬼灯を見る。鬼灯は野太い声を上げ、お香は思わず笑い出した。
「そこはグレーゾーンですっ!」
「ぐう…すみません、軽率でした。でも話せばきっと分かるはず!」
「鬼灯様、どうかこの子をよろしくお願いします。ちょっと平和ボケというか…本当にちょっとだけ抜けてるくらいなので」
「はい、何となく…いや、大いに分かります」
お香にそう言われるや否や、鬼灯はAを見やる。当のAは、男性獄卒から離れたかと思うと、権力者らしいゆったりとした足取りで店を眺めていた。
奥に進み、重たい扉を開けると、お香が口を開く。
「ここを更に奥に進むと衆合地獄刑場よ」
「空が赤い…いや、桃色?」
「A様、空を気にしてばかりですね」
先程の街とは打って変わり、おどろおどろしい雰囲気が漂っている。
「今は女も拷問を担当するわ」
「お香さんがですか?」
お香は微笑んで続ける。
「だから女の獄卒も増えてきてるの。そうだ、鬼灯様。女性だけの拷問チームというものが…」
何やら奥から人影が見える。Aは首を傾げた。
「拷問戦隊、ど
お香の言葉を鬼灯は繰り返した。
「ど助兵衛熟女団っ!」
「バリトンボイスで言わないでくださいー!」
珍しくAがつっこんだ。
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