第十五話 ページ15
「なーんにも」
「えぇっ!今の溜めは!?」
「確かにわたくし無しでは仏とか生き物は存在できませんし、名前からも分かるようにこの世の全てを照らしていますが。それきりです。要は肩書きだけ派手で弱っちい、みたいな」
「かっこいい!でもそれ使えねぇっ!」
桃太郎がいつものようにつっこむとAは苦笑いをして同調し、突然口を開いた。
「あーあ、わたくし喉乾きましたぁ」
わざとらしいその物言いと共にAは目線を送る。桃太郎は機転を効かせ、何とか捻り出した。
「た、確かに!何か買いに行こうかなー?…なんて」
「あ、あっちにお店が。桃太郎さん、行くわよぉ」
Aの棒読みな演技にも関わらず、鬼灯と白澤の動きが止まる。
「私も何か飲みたい気分です」
鬼灯がぽつりと一言。珍しく、白澤は鬼灯の言葉に頷いた。
「ちょっと休憩しよーっと」
二人の協力で、試合は一旦中止にすることに成功した。鬼灯と白澤に見えないように、二人はハイタッチをした。
「…それにしても暑いですねぇ」
そう言って桃太郎がパラソルの下のビーチチェアに座る。白澤は本当だよ、と汗を拭った。
「こんなに暑いところ行くの久しぶりだね」
「私も…暑いところと言えば阿鼻地獄くらいしか」
「パワーワードだなぁ…」
桃太郎がそう返すと、Aの声が三人の耳に入った。
「鬼灯さんと白澤さん、ちょっとはしゃぎすぎですね」
「いや、あなたが言うか…?」
サングラスをつけ、飲み物を片手に歩いて来たAに桃太郎がさりげなくつっこむ。
「…A様が宝冠を被られたまま海に行こうとしているのを見て。私はそれこそ、はしゃいでいらっしゃるなと思いました」
何せAにとっては初めての現世視察であり、宝冠をかぶったまま行こうとした彼女を鬼灯が流石にそれは、と止めた次第だった。
「それは秘密にする約束です、鬼灯さん」
Aがストローを口に咥え、白澤はいつもの調子で笑みを浮かべる。
「Aちゃーん、サングラス買ったの?超似合ってる」
「サンキュです」
飛び込んできそうな勢いの白澤をうまくかわし、Aがデッキチェアに横たわる。
「サングラスつける機会もなかなか無いよね」
白澤の発言にAが頷く。
「パリピ如来です」
「パリピ…」
鬼灯のバリトンボイスがAの言葉を繰り返した。
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