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第十三話 ページ13

「広ーい!」

 奥まで瑠璃色に澄み渡っている海を前にAが感嘆する。
 風が吹けば、Aは手で帽子を抑える。そんな光景を見て鬼灯が頷いた。


「えぇ、とても綺麗ですね。…一つ気に入らないのはどこぞの野郎がくっついてきたことです」

「Aちゃんがたまたま誘ってくれただけで、別にお前に付いてきたわけじゃないんですけれどー?」

「A様の親切心が災いしましたね」

「こっちのセリフだ!この鬼!」


 海に来て早速、鬼灯と白澤は言い合い合戦を開幕させる。桃太郎はそんな二人をよそに、テキパキとパラソルを開く。


「いやぁ、絶好の海日和ですね」

「そうですよねっ!塩作れそう」

「いやそれはよく分からないけれども!」

「ねねー、まず何する?」


 突然に白澤が桃太郎とAの間に割って入ってきた。目を丸くする桃太郎の横でAは考え込む。


「鬼灯さんの帽子が取れるとまずいから、むやみに泳げないですよね…でもお腹も空いてないし」

「鬼ってバレたらやばいですよね。ここ、一応現世ですし」


 一同で考え込んでいれば、Aがそうだ、と沈黙を破った。


「じゃあ…ビーチバレーやりましょう!わたくし、ずっとやってみたかったんです」

「お、僕それ賛成ー」

「確かに…それが良いかもしれませんね」

「皆さん…すみません。私のためにわざわざ」


 白澤がにやりと笑みを浮かべ、桃太郎も頷く。鬼灯は三人の気遣いに頭を下げた。


「さぁ、早速やりましょうか!」


 開口一番、Aは鞄の中から小さく畳まれたネットを取り出す。


「ビーチバレーする気満々だったんですね…」


 桃太郎がそう零すと、Aは誇らしげにぐっと親指を立てた。

「ネットがめちゃくちゃに嵩張(かさば)りました」
 

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作者名:タシャ | 作者ホームページ:無いです  
作成日時:2021年8月13日 14時

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