検索窓
今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:137,238 hit

4 ページ13

「使えるわけ、無いやろっ…。こんなん、ッ」



「神ちゃん…?」



「弾けないって、無理やって…、」



ピアノなんて、弾いてるを見てなんとなく言ってることはわかる程度やのに。
こんないくつも、プロが使うもんなんて…

だいたい、ピアノなんか弾く気ない。
それはきっとこの先絶対、
そう、今はっきりとわかった。

やって、

これは、お前が、



「しげが…、弾かな意味ないやろ…っ!」


こんだけのもん見せたんやから、責任持ってちゃんと弾いて見せて欲しい。
どんな音で、どんな音楽を奏でるのか。
それで、いつか一緒にスタジオ入って、一緒にプレイしよう。
忙しいし、夜勤もあるし、
きっと俺は遊び程度にしかできひんけど、


「これ全部、ちゃんと教えてや…ッ」


どんな風に使うのか、どう音が変化するのか…

叫びながら目の前が霞んだ。
歪んだ視界で、揺れたしげから雫が落ちる。
俺より先にぽろりと落ちて、半開きの口端を通り、
くしゃっと歪んだその顔はすぐ両手に隠れた。



「俺…神ちゃんとえっちしたい…」


顔を覆った状態で、泣きながら何を言うのかと、思わず目を見開いた。

「キスたいし、鳴かせたい、」

一緒に眠って、
起きたらまたデートして、
ピアノ弾いて、
神ちゃんの弾くギターを聴いて、

「金持ちになったら家にスタジオ作るから」

神ちゃんと、一緒に演奏したい。
俺の横で神ちゃんが、ギターを弾くんよ。

「したいこと、いっぱいあるんやで、神ちゃんと、…神ちゃんと、っ」

引き攣る声ごと抱きしめた身体は、あまりに細くて…
残された時間が本当に僅かなことを知る。

「もっと…いたいん、やけど」

初めて見たしげの涙。
キスをしたらしょっぱくて。
壊さないように抱きしめた身体から腕が伸びる。
俺の背中に回された腕は驚くほど強く、
大事に抱いていた腕に力を込めた。

「好きや、神ちゃんが、なぁ、神ちゃんもやろ?」

聞かせてや、
消えないように、刻むから…

「…どんな聞き方やねん、」

でも。
まぁ、言っとくけど、

「しげが思ってる以上に、好きやで」

しげのことが、大好きや。

頑張れなんて、言えない。
毎日点滴ぶら下げて、
何錠も薬を飲み、
身体なんて縫い目ばかりで、
なのに苦しいを言わない、
言えないしげに、
これ以上、頑張って欲しくないんや。

なのにずっと一緒にいたいと思うのは、酷なんかな。

迷って、言葉を飲み込んだら言うことがなくなった。

5→←3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (179 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
404人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - わきやまさん» お返事遅くなり申し訳ありません。JUMPからの遠征ありがとうございます、、!楽しんでいただけて幸いです。 (2018年2月27日 18時) (レス) id: 1b0f5e1577 (このIDを非表示/違反報告)
わきやま - Dears、号泣してしました。普段はJUMPばかり読んでいるのですが、思わずコメントしてしまいました。頑張ってください! (2018年2月24日 13時) (レス) id: dd9838bc03 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 紫あいすさん» ありがとうございます!緑赤、書いたことはないのですが頑張ります。笑 (2018年2月19日 1時) (レス) id: 1b0f5e1577 (このIDを非表示/違反報告)
紫あいす(プロフ) - 殺人未遂事件、思わず笑ってしまいました笑。ゆうさんの作品はどれも楽しみに読ませていただいています。もしよかったら緑赤のお話を書いて頂きたいです! (2018年2月18日 17時) (レス) id: 7333fadd2b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みおんさん» 良かったです〜!ありがとうございます! (2018年2月14日 23時) (レス) id: 1b0f5e1577 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆう | 作成日時:2018年2月5日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。