覚めない夢と蕩けた言葉【silent】

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Minato side


｢ほら、あがれって｣


外で話すのもあれだからって、
紬の家に再び想を招く。

泣き崩れていたAちゃんとは反対に、意外にも想はしっかりとした面持ちだった。
どうして、と言いたげな表情を浮かべ僕を見つめる。
想とのトークを開き、文字を打った。


[ふたりで話せって、紬が]


リビングで腰かけると、想はテーブルに携帯を置き、
ある画面を僕に見せてくる。


｢声を文字化してくれるんだ｣


Aちゃんのこと、すごく気になっていた。
だけど何も知らない僕が間に入っていいものかと迷った。

沈黙を破ったのは想の方だった。
想が打ち込んだ文字が差し出された。


[Aちゃん、大丈夫そうだった？]
｢…心配なら、直接会ってあげてよ｣
[会えないから]

なんで？何かあったの？
Aちゃんすごく泣いてたよ、って。
言いたかったけど、あまりにも余計なお世話な気がしてしまう。




｢…あ、そういえばさ｣
[ん？]
｢最近ね、古賀先生のフットサル場、行ってるんだ｣
[うん]
｢みんな全然変わらないよ、ほんとそのまま｣


缶ビールを出そうと台所へと向かう。
僕は少し、想と普通の会話ができたことではしゃいでいたんだ。
旧友との再会、くだらない思い出話。


｢…凑斗｣


だから、少し掠れた想の声を背中越しで聞くまで
想の耳が聞こえないことを忘れ、ひとり話していた。

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