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Your side
「佐倉くん…っ」
「待って佐倉くん…!」
痛いくらいに、紬ちゃんの声が耳をさした。
橋の上で足を止めたふたり。
そのふたりに駆け寄ろうにも、運悪く信号は赤色。
目の前を車が通り抜けていく中では、
2人の声までは聞き取ることが出来なかった。
だけど、想くんの声は嫌でも聞こえてしまう。
手話の動きははっきり見えてしまうんだ。
" 3年前ほとんど聞こえなくなった "
3年前の冬、私が彼に伝えられたように紬ちゃんにも
真実が伝えられていく。
ただ想くんの紬ちゃんを見つめる目が、
私のときとは微かに違うような気がした。
" いつか電話も出来なくなる "
" 一緒に音楽も聞けない "
" 声も聞けない "
8年前、ふたりは電話をしていたんだ。
一緒に音楽だって聞いて、たくさん会話だってしていたんだ。
私の知らなかった過去が、
想くんの声を通して、私の胸に深く突き刺さる。
" そうわかってて一緒にいるなんて、辛かったから "
もう、やめて。
" 好きだったから "
信号はもうとっくに青色なのに、足が動かなかった。
想くんを追いかける気力は私には残っていない。
想くんからはじめて教えてもらった手話。
" 好き " がこんな皮肉にも理解出来てしまうことが悔しかった。
想くんと逆方向に足を早める。
走ってる間にも涙はどんどんと溢れてきて、何度も目をこすって拭うのに、視界はぼやけたままだった。
「…っ、はぁ…、」
息をいくら吸っても、足りなかった。
走ったせいなのか、普段履き慣れないピンヒールのせなのか、
苦しくて、苦しくて、思わずうずくまった。
「こう…?」
" 顎の下を人差し指と親指で引きながら閉じる感じ "
「これが、好き」
" そう、好き "
初めて教えてもらった手話。
わたし、ちゃんと理解出来ちゃったよ、想くん。
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雨宮みさと(プロフ) - めっちゃ大好きです。楽しみに待ってます (2022年11月2日 18時) (レス) @page41 id: d8108038f9 (このIDを非表示/違反報告)
みーやん(プロフ) - 最高です。キュンキュンしてます。想くんと別れるのーって言う展開に追いつかないけど、別れて欲しくないって思うほどですが。もう、続きが気になって仕方ないです (2022年10月30日 11時) (レス) id: 6a7c2c00d5 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - めちゃくちゃ胸が痛い( ;ᯅ; )毎回感情移入してしまううううう (2022年10月30日 7時) (レス) @page41 id: b34c7041d1 (このIDを非表示/違反報告)
AkaNe(プロフ) - 毎話毎話素敵なお話で作者様の言葉選びが本当にすきです!!ゆっくりでいいので更新楽しみに待っています!!♡ (2022年10月29日 11時) (レス) @page34 id: 5323627667 (このIDを非表示/違反報告)
ま(プロフ) - 感情移入してしまうくらいステキなお話です…‼︎ただ一つ気になったのは青葉じゃなくて青羽かと思います(><)これから作者様のスピードで無理なさらず更新楽しみにしています♡ (2022年10月20日 0時) (レス) id: e356a3c07b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむぎ | 作成日時:2022年10月8日 18時