俺と彼奴とシンデレラ４ (ページ8)

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【紫耀】

Aが着替えを取りに来た日はすぐにわかる。

綺麗に畳まれた洗濯済みの服。

洗い物をついつい後回しにしてマグカップだらけだったシンクはスッキリとして、カップは元の位置にきちんと並べられている。

シーツも変えてくれているし、パントリーに買い置きしてある水まで冷蔵庫に補充してくれている。

それらは全て俺を想っての行為なわけで、そう考えると嫌われたわけではなさそうなんだけど…

じゃあなんで帰って来ない？

"紫耀は何もわかってない！紫耀は…私に言ってることと自分がしてること、全然違う。全然違うよ！"

あの日Aが涙を堪えながら俺に放った言葉。

廉の前では気にしてないふりをしたけれど、本当はずっと引っかかっていて、

いつからそう思っていたのか、どんな瞬間にそう感じたのか、根掘り葉掘り聞き出したくてうずうずしている。

とにかくきちんと話さないことには何も始まらない。

廉に頼んでAに嘘のスケジュールを伝えてもらって、着替えを取りに来るのを待ち伏せする？

それとも廉の家に行って、強引に引きずり出す？

いや…そんなことしたらますますAの怒りを買うだけか…

じゃあどうやったら話してくれるんだ？

まさか本当に母さんと会わせるまでずっと帰って来ないつもりなのか？

いや、でも…そうだとしても、俺そこは譲れねぇわ…

他は何もかも全部俺が悪いでいい。

けど、Aと母さんは会わせられない。

会わせたくない。

それぞれの立場を考えればわかる。
2人の気持ちが交わることなんてない。

会ったってお互いにまた癒えやしない傷が増えるだけなんだ。

「あーもう…どうすりゃいーんだっつの…」

一人ぼっちの家の中、敢えて口に出した思いは想像以上に大きく響いて、より一層虚しさが増したような気がしたんだ。