episode3 ページ4
｢おいおい、主役連れてかれちゃ何も出来ないだろ……まいっか。ロニエ、ベルチェこっちに寄越して｣
キリトが傍付きのロニエを手招いて、ベルチェを腕の中にすっぽりと収めた。
ロニエがぽかんとしていると、キリトが小首を傾げる。
｢……フレニーカのところ、行かなくていいのか？｣
｢えっ？ ……あ｣
なるほどすっかり忘れていた、と頷くロニエだが、すぐに｢い、いえ、ベルチェ坊の面倒を見るよう申し付けられたのは私ですから……！｣と辞退しようとする。
｢あー、じゃあ、フレニーカのところに行ってきなさい。はい、どうぞ｣
キリトは面倒くさげにそう言って、ベルチェをあやし始める。
無愛想で不器用過ぎるキリトの優しさに、ロニエは少し微笑むと、｢命令、確かに拝受しました、代表剣士殿｣と笑って命令を拝受し、回廊をティーゼと共に駆けていく。
｢キリトくんてば、あの言い方はどうなのよ｣
｢ロニエはああでもしなきゃ行かないよ……。フレニーカについては、俺も後日話したいこともあったし、カセドラルに来たばっかりの友人に付いてあげたいってのはきっとあるはずだしな｣
キリトがベルチェをゆらゆらと揺らしながらそうアスナに呟く。
クス、と控えめに笑ったアスナが、ベルチェの柔らかい藍色の髪を撫でて、一言。
｢キリトくんは、いつでもどこでも優しいのね｣
｢まあ、な。人になんの用もなく厳しくするようなこと、出来ないからな｣
顔を見合わせたふたりが、穏やかに笑う。
その光景を見上げたベルチェも、きゃっきゃと嬉しげに声を上げた。
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作者名：孝音 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月21日 17時
