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隣の貴方*3 ページ4

『…………』


はふ、と息をつく。ハープの爪弾いた音色がゆっくり後を引いて消えると、私はヘッドホンを外した。


「うん、一発オーケー。ハモリは後日、それからコーラスとオク下はとある人に頼むつもり。羽琉も了解済み……だったよね?」


知詠さんの視線にこくりと頷く。
ぱんぱん、と叩かれた掌の乾いた音と知詠さんの「じゃあ今日は解散!」のよく通る声が私の耳を貫いた。


『なんだよ、一発オーケーか……全然時間余ってるじゃない……』


行く宛もなく原宿まで出て来てしまったが、さすがは人の多いのなんの。
あ、いや、原宿はあいつ(・・・)の縄張りか。なら今日もいるかも……。


ずんずんと竹下通りを進み、途中の路地に方向転換する。少し歩いた先には【喫茶 羽琉】の文字が。


『おーっす』


カランカラン、とレトロな鈴が重厚な造りのドアを開いた途端に鳴り響く。


「お、来たね」


店の奥まったカウンターでニヤリと微笑んだ黒いシルエット。


『来たね、じゃないよまた入り浸ってんの……』


ツカツカとヒールを打ち鳴らして、私はそいつの横にどかっと座る。そいつを呆れた目で見てから、呟く。


琥珀(こはく)


「おっすおっす、明日発売の琥珀っちのCD1枚取り置いてあるけど?」


ひらひらとCDをひらつかせた琥珀に、ぽこっとチョップが舞い降りた。

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作者名:孝音 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月18日 0時

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